さまざまなベンチャー企業の「人材・組織・働き方」をご紹介していくインタビューの第9弾。
今回は、離婚カウンセラーと管理医療機器販売を中心にビジネスを展開されている、山川くみ子さんにお話を伺います。
― どうも、ご無沙汰しております。
山川さん お久しぶりですね。
― 以前は、結婚紹介、ワイン販売、不動産関連など、かなり手広く事業を展開されていたよぅに、記憶しているのですが。
山川さん そうですね、行政書士として登録するのと前後して、いくつかの会社を立ち上げました。
結婚や離婚に関するご紹介・ご相談、ワイン関連、医療機器関連などの事業を手掛けておりました。いまでも、ご依頼があれば、結構相談は手掛けています。
― アグレッシブというか、チャレンジングというか、なかなか真似できないと思っていました。
山川さん 行政書士に登録したのが60歳代半ばでしたから、お金で時間を買う感覚で、いろいろなビジネスに挑戦してみましたよ。
結果的には、なかなか軌道に乗らなくて、赤字もバカになりません。このところは、事業を止めたり会社を売ったりして、すっきりしました。赤字のものは、できるだけ早く閉めるに越したことはありません。
― 当初の見込みよりも赤字が大きかった、ということでしょうか。
山川さん オフィスの賃貸料など、ある程度はわかっていたものもあります。一緒に事業に取り組んでくれた人たちの人件費とか、ビジネスによってはシステム使用料とか、いろいろと出ていくお金が思った以上にありました。
― システム使用料?ウェブ関連ですか?
山川さん ウェブを運営するコストも、十万円単位かと思っていたら、すぐに百万円単位となってしまいました。それだけでなく、結婚紹介などの事業では、そのビジネス固有の使用料などが発生しました。
事業資金を借り入れたりもしましたから、赤字の事業を放っておくわけには参りません。見切りをつけて整理しました。
― 目が行き届かなかったところもありましたか。
山川さん 最近は振込なども自分でやるようになりました。振込手数料などの無駄なコストも他人任せにしていた時にはわかりませんでした。近頃は、しっかりと把握できるようになりました。
― 振り返ってみて、いかがですか。
山川さん お金の面ではけっこう損をしたところもありますが、その一方、手にいれることができたものもあります。
やはり、人脈といいますか、多種多様な人たちとのネットワークは大きな財産ですね。
― 仕事を通じてネットワークができてきた、ということでしょうか。
山川さん そういうところもありますが、私の場合、特に異業種交流会などの会合や集まりに、できるだけ足を運んで顔を出してきたことも大きいと思います。なにしろ、名刺1箱なんて、すぐに空になってしまいます。
― それはまた、積極的ですね。
山川さん いま改めて考えてみると、私が本当にやりたかったものが残っていると思います。
自分が本当にやりたいものは何か自問自答しながら、1年半かかって、ようやく自分の得意なものに絞り込んで、アピールできるようになったと言えるのかもしれません。
― そのひとつが、離婚カウンセラーですか。
山川さん そうです。本当に困っている人の相談に乗ってあげることができるところに、やってよかったと思えるものがあります。
離婚というと、いろいろとわからないことや不安なことがあります。法律的な問題だけでなく、お金の問題や心の問題もあります。
じっくりと時間をかけて、ひとりひとりの話に耳を傾けて、そうした問題にきちんと対応していきたい、というのが、私が行政書士の資格を取ろうとした動機だったことを、今更ながらに思い出しました。
― 原点に立ち戻ることができたわけですね。
山川さん 管理医療機器関連のビジネスも、そういうところがあります。健康や体調に問題がある人はもとより、不調や病気を予防できれば、それに越したことはありません。そのために、何かお役に立てるものがないか、探し出してご紹介できればと思っています。
― 確か、もともと看護師をされていたそうですね。
山川さん ええ、秋田と東京で40年ほど、やっていました。その経験も、いま活かすことができています。
(2016年2月9日掲載)
起業から事業の整理を経験された山川くみ子さんへのインタビューの第2回は、起業に至る経緯からお話を伺います。
― そもそものお話なのですが、看護師を長くやって来られた山川さんが、なぜ、起業してみようと思われたのですか。
山川さん さきほどもお話したように、40年ほど看護師一筋に仕事をして参りました。それで定年退職したのですが、いままで仕事をずっとしていたせいか、家にいてテレビを見るだけの生活では、間違いなくボケてしまいそうでした。
― 一般的に言って、現代の60歳、70歳くらいの方々は、まだまだ現役というか、お元気で仕事もできるほうが、むしろ普通といえそうですね。
山川さん いま振り返ってみると、看護師をしていた頃は、とにかく頑張って働くのが第一で、他に時間やエネルギーを割くことはできませんでした。本当に、365日、仕事ばかりでした。その点は、家族にも迷惑をかけたかと思います。
― 起業されてからも、仕事ばかりではないですか。
山川さん むしろ、今のほうが仕事以外にも目がいくようになってきたような気がします。夫や姉など、家族の気持ちも少しは考えて、休日の過ごし方や旅行などを相談して楽しむ余裕があります。
― 起業するにあたって、ご家族の反対などはなかったのですか。
山川さん もともと、私が何か言って夫がついてくるような関係でしたから。もちろん、黙ってついてきてくれる夫には感謝しています。
経済的な面でも助かっているのは事実です。生活は夫の収入で賄うようにして、事業に使う資金は私の年金を充当することで、無理に事業に全てを賭ける必要はありません。
― 起業してみて、何か気づかれたことはありますか。
山川さん 特に若い人と意図的に会ってお話をするようになったせいか、自分の口から申し上げるのも何ですが、考え方が柔軟になってきたようです。以前なら、ひとつの考え方に拘っていたところでも、割と自由に考え方を変えるようになってきました。
人の話にも聞く耳をもつ、人の話を聞こうとするスタンスが、いつでももてるようになりました。
― これからの展望といいますか、どういうふうにビジネスに取り組んでいかれますか。
山川さん 将来的には、といっても歳が歳ですから、近いうちにということですが、管理医療機器関連の事業で、ある程度のベースを確立して、離婚などのご相談をじっくりと手掛けていきたいと考えています。
― コア(核)となるのは、やはり離婚カウンセリングですね。
山川さん 離婚カウンセラーという仕事は、ご相談される方といつでもつながっていて、安心してもらうことが何よりも重要かもしれません。
仕事中に会社のパソコンから離婚の相談をするわけにもいきません。夜遅くに、自宅か別の場所から、ご相談の連絡をいただくことになります。
ただ、夜というのは不思議なもので、悪い方に悪い方に、考えが行ってしまいがちです。ですから、真夜中であっても、できるだけ早く返事をすることで、まずは落ち着いて冷静になってもらうことが、離婚カウンセラーのやるべき第一の仕事ではないかと思います。
― 大変そうですね。
山川さん 早めに休んで、夜中に起きてメールをチェックすればいいんです。特に予定のない日は、自宅で夕食を取ることも珍しくはありません。
― どういうスタンス(姿勢)でカウンセラーの仕事に取り組まれているのでしょうか。
山川さん たとえば、離婚協議書を作成して、それで終わり、というのでは仕事のやりがいが感じられません。
カウンセラーといっても、1回の相談で報酬をいただくよりも、当初はたいしてお金にならなくても、後々、いろいろと相談していただいて、依頼者にとって、いい結果が得られれば、それでいいと思うようになりました。
― ビジネスとしては、あまり儲からないように聞こえますが。
山川さん 以前、税理士さんに社長は利益を追求しないとダメ、とよくお叱りを受けていましたが、もうひとつ納得しきれていませんでした。多分、私のやりたいことが、単に利益を出して会社を大きくすることではなかったからでしょう。
― 本当は何がやりたかったのですか。
山川さん 依頼人の喜ぶ顔をみたいということでしょうか。「ありがとう、助かったよ」といってもらえれば、この仕事をやって良かったと心の底から思います。
たとえば、一度はケンカをしたような人であっても、後でオフィスに遊びに来るような関係で、仕事をできたらと思います。
― クライアント・ファースト(依頼人を第一に考えよ)そのものですね。
山川さん そうですね。ここも、オフィスというよりは、ご相談スペースといったものに変わっていけばいいと思っています。
(2016年2月16日掲載)
看護師からビジネス・パーソンに転身された山川くみ子さんへのインタビューの第3回は、ネットワーク作りを中心に日常的な活動についてお話を伺います。
― ところで、今、最も力を入れていらっしゃるのは、どういうことでしょうか。
山川さん 会社を作ったり売却したりするなかで、さまざまな人たちとの出会いがあり、それをネットワークとして活かせるようになってきました。そうした人脈を活用できれば、と、いつも考えています。
― いろいろな会合やパーティーに参加されていると伺いましたが。
山川さん 基本的には、異業種の方々とお話ができるようなものに参加させて頂いております。
こう申し上げては何ですが、士業の方々のなかには、同業者の集まりばかりに顔出しされる先生方がいらっしゃるようですが、それでは、ネットワークが広がらないでしょう。また、関連する士業同士の集まりも、よく行われているようですが、それだけでは、人脈が広がっていくようには思えません。
― 参加費ひとつとっても、結構、費用が掛かりませんか。
山川さん 確かにお金は使っています。それに見合う程度のメリットもあります。メリットといっても、直接、離婚カウンセラーのご相談をいただくわけではありません。
若いビジネス・パーソンの皆さんとお話をしていると、それだけで刺激を受けて自分の頭も活性化します。特に27~28歳くらいで、複数の会社を経営しているような人たちは、頭の回転も速くて、刺激的です。今なら、オリンピックを見据えて、民泊を活用して、いかにビジネスを進めていくか、といった話題が盛んに語られています。
こうした方々とお話しするだけでも、起業したおかげで、大きなメリットを享受できているといえます。
― 異業種交流会で名刺交換はたくさんしても、なかなか誰が誰だか覚えていない、なんていうことはありませんか。
山川さん それは、そうですよ。一言二言、挨拶を交わしただけの人のことをしっかり覚えていたら、記憶術の達人でしょう。私は、翌日、連絡があっても、そうそう思い出せません。ですから、名刺にちょっとメモしておいて、それを見ながらメールに返事をすることで、どういう人か思い出しています。
― 相手は山川さんを覚えているのでは?
山川さん まあ、私の場合、見た目が見た目ですから、相手の方は覚えていてくれるようですね。こちらは思い出せない、というほうが多いのかもしれません。
― 会合やパーティーで人脈を作るコツみたいなものはありますか。
山川さん 看護師の頃から「話に変に説得力がある」と、よく言われていました。自分ではそう思ったことはあまりないのですが。
もともと、患者さんを一目見ただけで、その方の心境とか体調を判断するのが仕事でしたから、相手の方の状況を言い当てることがあるのかもしれません。そのせいか、名刺交換しただけでも、私の印象を覚えておいていただけるのかもしれませんね。
― 確かに、体調や考えていることを言い当てられると、相手の方には強い印象が残りますね。
山川さん 自分のことより、まず相手の方に対して関心をもって、お話を聞かせて頂くことが、大切なことではないでしょうか。人脈を作るとはいっても、強引に売り込むわけではありません。ネットワークとか人脈は、名刺交換をしながら、お話をさせて頂いた結果として、次第にできていくものでしょう。
パーティーや会合は、幅広い方々からお話を聞かせて頂くのに、いい機会ですね。
― なるほど。積極的に参加してみて、まずはいろいろな話を聞いてみることが大事なようですね。
本日は、お忙しいところ、どうもありがとうございました。
インタビューを終えて
こうしたHP上の文章では、山川さんの独特の語り口をうまく再現できず、お話の魅力の一端しかお伝えできていないことを、まずはお詫び申し上げなければなりません。
今回のインタビューで興味をもたれた方には、機会があれば、直接、山川さんに会って言葉を交わすことをお勧めします。もし、異業種交流会やパーティーなどで見かけたら、是非、お話ししてみてはいかがでしょうか。
ところで、起業というと、最初からプロダクトやサービスが明確に絞り込まれているケースが多いものと思います。一方で、いろいろとチャレンジしてみて、その結果から本当にやるべきものが見つかっていく場合もあるかもしれません。
起業を登山で譬えるならば、登るべき山はひとつでも、登り方はいろいろです。その山が、いままで誰も登ったことがない山であるとすれば、試行錯誤は必然とも思えます。
失礼ながら、山川さんのような年齢の高い方でも、試行錯誤を繰り返しつつ、ビジネスやキャリアを作っていかれる姿を目にすると、もっと若い世代の人は、まず行動する、行動しながら考える、くらいの積極性が望まれるような気がしてなりません。
(2016年2月23日掲載)
写真提供:行政書士山川くみ子事務所
写真・構成・文章作成:行政書士井田道子事務所+QMS