2%の賃上げで毎月の賃金は必ず2%増えるのか?
実は「賃上げ2%」といっても、対象となる社員の方々の毎月の賃金が、自動的に2%アップするというわけではありません。
皆さんご承知のように、月例賃金は上がっているはずなのに、税金(所得税・住民税)および社会保険料(雇用保険料・健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)などが増えたことにより、実際に銀行口座に振り込まれる手取り額が減ってしまうことは、往々にしてあります。税率や保険料率などが法的に変更されなくても、賃金が上がることで、より高い税率や保険料率が適用されることによって生じる現象です。
それでは、手取りはともかく、名目上は「賃上げ2%」といえば必ず月例賃金が2%分増えるのでしょうか。
結論としては、名目上も必ずしも2%昇給することを自動的に意味するわけではありません。
なぜそうしたことが起こるのか、月例賃金の構成から考えてみましょう。
まず、月例賃金は、毎月決まった金額が支給される固定的な項目と、その月によって支給額が異なる変動的な項目があります。
変動的な項目は、時間外勤務手当(いわゆる残業代)、休日勤務手当、深夜勤務手当など、該当する時間数や日数に応じて支給される金額が決まるものです。賃上げが行われると、これらの算出基準となる賃金の時間単価はアップします。したがって、時間外勤務の時間数が同じであれば、賃上げ後には必ず、対象となる部分の賃金は増えます(もちろん、もし時間数が減少すれば、支給額も減少することは十分にあり得ます)。
それに対して、通常、基本給と諸手当から構成されていることが多い固定的な項目は、賃上げが直接的に反映されるはずです。
基本給というのは、文字通り、給与の基本的な要素です。
一方、諸手当というのは、個々の社員の事情に応じて支給されるものです。まったくない会社も時にはありますが、大半の会社では、何らかの手当を支給しています。具体的には、通勤手当、食事手当、住宅手当、扶養家族手当、職種や職務内容に応じた手当(役職手当、営業手当など)などなど、さまざまな種類があります。会社によっては、基本給よりも手当のほうが、支給金額が多いこともあります。
さて、賃上げを実施するとして、いずれの賃金項目が上がるのでしょうか。
こうでなければならないという法的なルールや規制はありませんから、実態としては、さまざまなケースがあるでしょう。ただ、一般的には、基本給を昇給させることを「賃上げ」と称し、手当を増額させることは「改定」とか「見直し」という場合が多いように思います。
つまり、「賃上げ2%」ということは、月例賃金が2%上がるというよりも、そのうちの基本給が2%上がるということを意味するケースが多いようです。
言い換えれば、「賃上げ2%=基本給の2%昇給」であれば、手当が多い人ほど、月例賃金の昇給率は低くなります。
たとえば、基本給20万円・固定的な手当5万円の人にとってみれば、基本給の2%(4000円)昇給は、月例賃金では1.6%の昇給率となります。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年2月16日更新)