ブラック化を招きかねない10のポイント(3)
4.新たなITが導入されない
仕事を効率的に進めることとも通じますが、現場でもオフィスでもITを活用せずに仕事を進めることは、現実的には不可能といえるでしょう。特に、経営トップと現場や顧客とをつないで適切なコミュニケーションを図るツールとして、次々と新たなITを導入・活用しているかどうかが、重要なポイントになるものと思われます。
そうであるにも拘らず、極端な例をあげれば、相変わらずWindows XPを使って予算管理をしているとか、「うちはBYODだから」といって仕事上必要な情報機器(携帯、スマホ、タブレット、パソコンなど)をまったく貸与せず、社員が個人で購入・契約して使っている機器に対して、セキュリティ対策を何も取っていないとか相応の金銭的な補償をしていないなど、ITを導入・活用する意思を感じさせない会社が意外と少なくないようです。
それでいて、会社のスタッフが仕事として運営している会社のHPで、経営者がブログで私的な話題ばかりを日々更新しているといった、笑えない話もあります。
一般論になりますが、やはりITに前向きに取り組んでいる企業、なかでも、現場でITが次々と活用されている企業は、ブラック化しにくい体質をもっているのではないでしょうか。
5.仕事の分担が極端に属人的
「余人をもって替え難い」人材といえば、優秀な人だから安易に他の社員に替えるわけにはいかない、といった褒め言葉に聞こえるかもしれません。
それでは、余人をもって替え難い人材だらけの職場があったら、有能な社員ばかりを集めた精鋭部隊となるのでしょうか。
実は、そういう人事部門を以前、見たことがあります。給与・社会保険担当、福利厚生担当、教育担当など実務担当者の多くはベテランの契約社員ばかりでした。社員は管理職が数名いますが、採用や異動・昇進などの人事業務を担当するだけで、契約社員の仕事は、ほぼお任せ状態でした。
確かに、それぞれは有能ではありました。その一方で、担当以外の仕事には一切タッチしないため、隣の人の仕事は何も分からない状況でした。
そのなかで給与・社会保険を担当していた方が、急病で倒れてしまいました。社内では対応できないため、慌てて税理士事務所に給与計算を代行してもらい、社会保険労務士事務所とも契約して対応してもらったそうですが、社員の個別の事情に応じた処理が分からず、半年ほどは給与の金額がおかしいといったクレームが毎月寄せられたそうです。コスト面でもかなりの出費となったようでした。
このケースは社内の問題ですから、まだ対応のしようがあります。同様のケースで、仕事の引き継ぎができないまま、営業担当が辞めてしまい、見積書と口頭での約束が違うなどといったトラブルが顧客との間で生じたものも聞いたことがあります。
確かに、仕事のやり方には属人的な面があります。マニュアルを整備してトレーニングを徹底しても、個人差はどこかに出てしまいます。しかし、必要最低限のレベルでは、担当者が代わってもすぐに対応できるようでないと、顧客や他の部門に迷惑を掛けてしまいます。
そのためには、正社員か非正規社員かは問わず、ある程度は他の社員と仕事の内容について共通の理解があり、仕事のやりかたの基本は共有されていることが必要となります。そして、マニュアルとして整備されるなり、システム化して誰でも操作できる体制を作るなりしておくことが求められます。
現実には、反対の対応を取る企業も時にはあるようです。業務の引き継ぎが終わるまでは退職を認めず、結局、いつまでも半ば強制的に仕事を続けさせるといったことになれば、ほとんどブラック企業と呼ばれてもしかたのない状況に陥っていると言えます。
作成・編集:調査研究チーム(2015年3月11日更新)