社員と人事のコミュニケーション(後)
さて、人事部門としては、採用・異動・昇進昇格・評価など伝統的な人事機能から得られる情報とともに、キャリアチェンジのプログラムや退職者のエグジット・インタビューなどで従業員の声を直接聞いたりするなどして、日頃から人事上の経営課題の特定や解決策の検討に取り組んでいくことも大事です。
また、各種のトレーニング、特に宿泊を伴う集合研修は、人事部門が社員の声を直接聞くのに有効でしょう。研修の最中や終了直後は、面と向き合ってインタビューを行うわけではなくても、普段はあって言葉を交わすことが少ない社員とも、雑談の延長で本音が聞ける機会といえます。こうしたものは、eラーニングでは得にくい機会でもあります。
今後は、既にある人事情報と、これから見出されるであろう新しいデータを統合して、まったく新しい知見が得られるかもしれません。いわゆるビッグデータの活用です。
たとえば、社員一人ひとりの健康状況をモニタリングして、身体的・精神的な不調と上司とのコミュニケーションのスタイルや頻度との間に、何らかの相関関係が予防的に確定されるかもしれません。社員食堂でのメニューの販売動向などから、職場のおけるモチベーションのレベルが推測されるかもしれません。そうしたデータから、社員一人ひとりの評価結果が予測できる時代が来るかもしれません。
ちなみに、人事コンサルティングなどをしていると「今日はこれだけ話を聞いてもらってよかった」と言って、一種の満足感とともに、現場の社員の方々とのインタビューが終了することが、けっこう頻繁にあります。
多分、不平不満というのは、それを受け止めてもらう機会がないことで溜まってしまうものでしょう。まずは、黙って話を聞くことから始めないと、なかなか問題を整理することができません。クレームに対応するといっても、その場で答えを出す必要は、あまりありません。実際にお話を伺うと、不平不満をもっている本人も、そう簡単に解決できるような方策はないとわかっている場合が圧倒的に多いのです。
もし、社員が何らかのクレームや不平不満を言ってきたら、きちんと受け止めることがポイントです。時間に余裕をもって、反論せずに、その社員の言葉に耳を傾けることから、問題解決はスタートします。できるだけ、メールやSNSを通じてのやりとりではなく、直接会って話をするようにして、不平不満よりも現状の問題点や改善すべき事項を聞き出すように心掛けたいものです。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年4月17日更新)