目標は立ててはみたけれど……(前)

目標は立ててみたけれど……(前)

 

4月も終わるころになると、多くの企業では今期(上期)の目標を設定し終わっていることでしょう。

目標設定というと、目標の内容や要件、設定プロセスなどに目が行きがちです。このときに、特に見落としがちなポイントがひとつあります。

 

それは、目標を設定すると同時に着手しているかどうか、という点です。

 

以下、ここでご紹介するケースは、実話に基づいていますが、守秘義務の上で業界や職務内容などを実際の状況とは異なるものに変更しています。ご了承のうえ、お読みください。

 

先日、クライアントの関係者の方々とお話ししていると、ある執行役員からこんな話が出てきました。

 

「今度、チームリーダーに登用したA君、思ったより動きが悪いんだよね。」

「何かあったんですか。チームメンバーとの関係がうまくいかないとか?」

「いやあ、日常の仕事は問題ないし、むしろ、できるほうですよ。チームメンバーの面倒はしっかり見るし、難しい案件は自分でも処理しているし。でもねえ、もう1カ月近く経つのに、新サービスの企画の件、全然やってなかったんですよ。」

 

この企業はIT関連で、特定の業界向けにITサービスを提供しています。A君というのは、経験豊富で優秀なエンジニアということで、いくつかのプロジェクトも任され、今年度から管理職に登用されたそうです。

この会社では、毎年4月から事業年度が始まりますが、3月の段階で前年後期の業績評価と当年度上期の目標設定を行っているそうです。

 

実はこの会社、しっかりとした目標管理を実行していることで、知る人ぞ知る会社だったので、A君の話を耳にして意外に感じました。

この執行役員の方も、マネージャーや役員として目標設定を運用するのに慣れていますし、無理やりノルマを押し付けるようなタイプには見えません。Aさんとも、日常的にコミュニケーションを取っています(以前にもAさんのことを褒めていた記憶があります)。

執行役員の方のお話では、Aさんは他の目標はしっかりと取り組んでおり、中には既に結果が出ているものもあるそうです。ところが、日常のメールのやりとりの中で、ゴールデン・ウィーク明けには新サービスの開発プロジェクトに着手できそうか、軽く確認するつもりでAさんに尋ねたところ、まったく進んでいないことを聞かされて、驚いたようです。

 

「いやあ、そろそろ企画書が出てくるか、幹部会でのプレゼンのスケジュールでも聞いてくると思っていたんだけどねえ」

「まあ、まだ上期が始まって1ヶ月しか経っていませんし、そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか」

「そうでもないんだ。6月には開発作業に入って下期にはリリースしたいんだ。これだって、A君と話し合って決めたスケジュールだよ。必要経費だって予算化してあるし。」

 

(後半に続く)

 

作成・編集:人事戦略チーム(2015429日更新)