こんな不満ありませんか?   ~評価について(後)

こんな不満ありませんか?~評価について(後)

 

(前半より続く)

 

評価についての不満といっても、評価だけにとどまるわけではありません。人事制度全体との関連が問題視されることもあります。

 

たとえば、評価結果が賃金や昇進・昇格に反映されないとか、反映されていても意味がないほど小さいといった処遇への反映に関するものがあります。特に、賃金制度に何らかの不備があるためなのか、一度ついた昇給の差が解消されないから、評価は受け入れられないという人もいます。

昇給評価と賞与評価をひとつの評価制度でまとめて行っている企業では、通常、評価要素ごとにウエイトを変えて処遇に反映させているでしょう。このような場合、そのウエイトへの不満や不信感が生じることがある一方で、ウエイトを変えても、結局は大して違わない(昇給評価が高ければ賞与評価も高いし、昇給評価が低ければ賞与評価も低いなど)ことへの不満が発生することも無視できません。

 

また、評価を実施する時期とその結果を処遇に反映させる時期が大きくずれていると、評価の記憶がなくなってから処遇の結果にショックを受けてしまうことも出てきます。特に、昇進・昇格など単年度の評価ではなく、複数年度の評価結果を累積して反映させる場合には、今年これだけ頑張っていい評価になったのに昇進・昇格できなかったときに、それほどでもない同期の誰かが昇進・昇格したとなると、理屈はわかっても納得できないとか、えこひいきやある種の差別があるのでは、といった不満が残りがちです。

 

評価制度の運用に問題があると思われているケースも、実によくあります。

 

大手企業ほど陥りがちな問題のひとつに、部門間や職種間の公平性を担保する方法に疑問符がつく場合があります。評価結果に著しい偏りが出現したときに、人事部門で評価結果を機械的に変更してしましまうとか、人事の部課長レベルで最終の評語を個別に書き直すといったことも行われていることがあります。

こうした場合、評価者が自分の判断した評価結果を本人にフィードバックすると、最終的な評価とは違うものが伝わります。もしくは、自分の評価結果とは異なる最終評価の結果をフィードバックすることになり、被評価者に説明しきれなくなる虞があります。いずれにせよ、評価への責任がうやむやになってしまい、評価者である管理職のモラールダウンや責任放棄を助長することにつながりかねません。

ほかにもあります。たとえば、人事異動が頻繁に行われる企業では、異動直後の人と異動がなかった人の扱いを同じにするのかどうか、といったことも問題になる場合があります。特に職種や事業が異なる間で異動が行われると、趣旨や狙いはともかく、現実に異動した本人は結果を出すまでの時間が必要でしょう。そうした事情を評価において考慮しないとすれば、きっと本人から不満が出るでしょう。ただ、考慮のしかたが機械的すぎると、異動していない人から反対に、チャンスがもらえないといった声が生じそうです。

 

経営トップからは、評価者である管理職に関する不満がよく聞かれます。

まず、管理職が言うべきこと・厳しいことを適切に社員に伝えられないというものです。反対に、管理職がメリハリのきいた評価を実施できていないために、有能な社員やできる人材を発掘・育成できない、といった不満を漏らす経営者や役員もいます。

また、経営全体としては、人件費の総額という枠の中で昇給や賞与を実施している以上、むやみにいい評価ばかりは出せません。そこで、自分の部下や部門は別枠(例外)扱いしてほしいとか、むこうの部門は業績が挙がっていないのだから原資を回してほしいなど、いささか身勝手なことを主張する管理職がいて困るという話もよく耳にします。

 

より根本的なものとして、評価という行為そのものへの不満があります。「人が人を評価するのはおかしい」という、いわば、いわば原理主義的な反対を口にする社員がいる場合に該当します。

評価をする管理職からは、結局は好き嫌いで判断するとか、派閥があるからどうにもならないといった、開き直りとしか言いようがないような発言も本音として語られることがよくあります。

実は、通常は、人を評価するのではなく、仕事ぶりや仕事の結果を評価するはずですが、役員でもこういう誤解を解く努力を放棄している実例が目立つようです。

もうひとつ根本的な問題は、評価制度がいい悪いではなく、自分が評価されていると実感できないということがあります。これは、処遇への不満か、仕事のやりがいが感じられないことへの不満と思われます。

 

このように、評価についての不平不満は多種多様なものがありますから、その対処にもいくつもの方法があります。それらについては、別のコラムでご紹介したいと思います。

 

作成・編集:人事戦略チーム(2015513日更新)