評価の不満を解消するには(1)
前回・前々回のコラムでも触れましたが、人事考課や査定など評価に関する不満には実に様々なものがあります。ここでは、代表的なものについて、その対処法をいくつか、ご紹介してみたいと思います。
評価への不満の第一に、評価基準への不満や不信感があります。
評価基準がないとか、仕事の実態に合わないなどといった場合は、少なくとも、何らかの評価基準を設定したり、見直したりすることは必要です。
ポイントは、その作成プロセスではないでしょうか。つまり、一方的にこの評価基準で評価しなさいと言ったのでは、多くの社員から納得は得られないでしょう。評価基準を作成・変更したり、検討したりするプロセスにできるだけ多くのキーパーソンを巻き込んでいくことが重要です。
職種や事業などによる違いなども、こうしたプロセスで相互に理解してもらうことができれば、ある程度、納得できるものとなるでしょう。
加えて、評価基準そのものを全社的にオープンにしておくことも、できるだけ実施したいものです。職種や事業による違いや果たすべき役割による違いなどを相互に理解し合うことが、多少なりとも促進されるでしょう。
必要に応じて、過去に設定した目標の具体的な内容や、評価の根拠となった個別の事象例なども、社員全体に周知していくことも望まれます。
第二に、評価者への不満があります。
たとえば、能力や適性について問題のある評価者がいるとか、しっかりとした説明能力がないとか、個人的な先入観で評価するといった問題がよく指摘されます。
評価者、すなわち、管理職の登用の基準や手続きがいい加減で、マネージャーとしての適性や能力に欠けるのであれば、それは会社の人事施策の間違いといえるでしょう。ただ、そういったケースは、実際にはそれほど多くは見られません。
大半の企業では、適切な管理職登用プログラムを運用し、評価者トレーニングを定期的に行っていると思います。また、評価の基準や方法についてマニュアルを整備したりeラーニングのコースを設けたりして、必要な対策はとっているでしょう。
それでも評価者に対する不満があるということは、評価者と被評価者との日常的なマネジメントの実態に何らかの問題があると考えざるを得ません。背景には、職場が離れているなど物理的な要因もあれば、忙しくてちゃんとしたコミュニケーションが取れていないなど組織運営上の要因もあります。
多くの場合、個々の評価者が適性や能力に欠けるというよりも、マネジメントの方法論、なかでも評価に必要なコミュニケーションの面で課題があるように思います。職務分担や目標設定に関する指示・指導、日常のアドバイスやサポート、評価のフォードバックなどについて、基本的な知識やテクニックが身についていないこともあれば、ベテランの管理職になると、やっているつもり、できているはず、という思い込みが障害になっていることも少なくないように感じられます。
そうであれば、新任のマネージャーや管理職候補は当然として、ベテランのマネージャーも含めて、ビジネス上必要なコミュニケーションについて、その実践状況を定期的に診断し改善していくことが求められます。
そのためのツールとして、多面評価を実施している企業もよくありますが、ここで注意したいのは、多面評価の結果をダイレクトに昇給・賞与や昇進・昇格に反映させるかどうかです。
ストレートに反映させるとなると、管理職などから納得できないという声が出てくることもよくあります。多面評価の目的がマネジメントの現状分析や定期診断であるならば、その結果は、処遇への反映よりもマネジメント上の課題の確認にとどめて、評価者(管理職)への不満を少しでも解消するのに注力したほうが効果的と思われます。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年5月21日更新)