評価の不満を解消するには(2)
評価者への不満といっても、評価者個人の問題というよりも、制度やルールにおける問題もあります。二次評価者や三次評価者が個々の評価を直接決定する場合、被評価者との距離感、つまり、評価者が仕事の実態を理解しているかどうかから、不平不満が生じていることもよくあります。
また、非正規社員からは、まったく評価されることがないという不満もあります。それでいながら、仕事ぶりが問題だからといって、雇用契約を打ち切られては、不満や不信感をもつのが当然でしょう。
こうした制度やルールにおける不備や不都合は、まず、目的を再確認することが肝要です。
二次評価や三次評価は、通常、社員一人ひとりを評価するというよりも、一次評価におけるバラつきを見直すこと(甘辛調整)が狙いでしょう。そうであるならば、個々の評価点を書き直すのではなく、評価点の分布状況や平均点の違いなどから、一定のルールに従って評価点全体を補正することが望ましいでしょう。
評価の機会がほとんどない非正規社員についても、仕事の内容が同様であるのなら、基本的に正社員と同じ評価基準で評価して、その結果をフィードバックするのが、原則でしょう。もちろん、昇給や昇格・昇進など処遇に反映するところは、いわゆる正社員とはルールが異なり、雇用契約を継続するかどうかということころに反映されることになるでしょう。一部は、昇給や賞与などに反映させるかもしれません。
評価に関する第三の不満として、人事制度全体との関係が適切に連動していないことによって生じる不満があります。
たとえば、評価結果が賃金や昇進・昇格などの処遇に、はっきりと反映されているとはいえないケースがよく見られます。
こうした場合、評価の問題というよりも、給与制度・賃金制度・賞与制度や等級制度・資格制度・役職制度などの問題であることが多いように感じます。つまり、評価制度は適切に設計・運用されているがゆえに、昇給や賞与、昇進や昇格など処遇への反映方法にある課題が、より鮮明に浮かび上がってくるのです。
対処法としては、人事制度全般、特に給与・賃金・賞与や等級・資格・役職などに関するルールを見直すことになります。
ここで注意したいのは、ルールはあっても、社員から見れば恣意的とも受け取られかねない、運用の幅(柔軟性)をどこまで許容できるかということです。特に、昇進や役職任用などは、最後は経営判断で決めるところが必ずありますから、事前の評価(アセスメント)と事後の評価(アプレイザル)を分けて処遇を検討すべきでしょう。
昇進や役職任用はアセスメント(事前評価)に基づくところが大ですが、賞与などはアプレイザル(事後評価)で決めるのが筋でしょう。
人事制度との連動ということでは、評価を実施する時期とその結果を処遇に反映させる時期が大きくずれているケースも、不満も招きかねません。特に、昇進・昇格など単年度の評価ではなく、複数年度の評価結果を累積して反映させる場合などは、要注意です。
賞与や昇給であれば、単なる論功行賞として実施してもいいかもしれませんが、昇進・昇格となると、ご褒美という以上に、戦略的な人材配置やロールモデルの提示といった、人材マネジメント上のメッセージ性を強く打ち出す狙いがあります。
時期のずれだけでなく、制度運用の狙いが違うのです。
評価が良いはずなのに昇格や昇進ができないといった不満は、タイミングの問題とともに、見ているポイントが違うことに起因していることもあります。評価制度の問題というよりも、昇進・昇格の仕組みや運用実態が適切に説明されているかどうか、そして実際に昇進・昇格の対象となった社員がその処遇にふさわしいと他の社員からも認められるかどうかが、課題となっていることが多いようです。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年5月27日更新)