評価の不満を解消するには(4)
第六の問題は、より根本的なものとして、評価という行為そのものへの不満があります。「人が人を評価するのは納得できない」とか「所詮は好き嫌い(または派閥・学閥など)で決まるのに、評価なんてやるだけ無駄」といった批判や諦めの声です。
こうした不満に対応するには、評価が、人材育成、特に社員本人の能力やスキルを個別具体的に開発するのに有効であることを、実感してもらうことがスタートラインかもしれません。
自分の能力が開発され、新しい仕事ができるようになったり、以前は失敗した仕事をちゃんと処理できるようになれば、人事や処遇がどうであろうと、社員にとって損はない話でしょう。そのためには、人材育成のPDCAサイクルを効果的に回していくことが望まれます。
評価というのは、まさしく、このうちのP・C・Aの機能を横断的に担うものです。
P(PLA)は、評価基準の設定に他なりません。
業務目標の設定にせよ、能力やスキルの習得を目指す目標にせよ、コンピテンシー評価の基準にせよ、まずは、クリアすべきバー(基準)を設けなければ、どのような方向にどのようなレベルで頑張れば自分が成長できるのか、能力開発のやりようがありません。
C(CHECK)は、実行後にどこまで、できた(できなかった)のか、評価(確認)するプロセスです。
大切なのは、他者による評価と自己評価との「ずれ」を認識することです。自分では、できているつもりでも、第三者から見れば、とても合格点は与えられないこともあります。反対に、自分ではあまり満足のいかない場合でも、周囲から見れば十分に役割を果たしているということも、よくあります。
この「ずれ」を整理して統合できないと、評価という行為そのものへの忌避感や他の要因(好き嫌いや派閥など)へのすり替えが容易に起こりえます。ここに、評価におけるコミュニケーションの必要性があります。
仮に、効果的なコミュニケーションがとれずに、「ずれ」がそのまま残ってしまったとしても、「ずれ」があることを認識し、その理由を自分なりに考えてみれば、少しは評価が役に立ったといえます。
A(ACTION)は、Cを受けて、次にどういう方向に成長していきたいか、を考えて、次のP(PLAN)やより長期的な能力開発目標を設定していくステップです。
できなかったのなら、その原因を分析して、もう一度チャレンジするのか、別の方向の仕事に転換してみるのか、基礎的なレベルからやり直すのか、十分に考えて、次のプランを決めることになります。
できていたのであれば、より難度の高いものにチャレンジするのか、別のキャリアに挑戦するのか、組織上の要請とも相俟って選択肢が多様になります。
このように、能力開発のPDCAを自分なりに回していくことで、もし、評価に不満があったとしても、しっかりとした実力があれば、チャンスが来るまで待つこともできるでしょうし、別の部門や職種に変わることもありえるでしょう。最終的には転職するとか、自ら事業を立ち上げるといった選択肢も現実のものとなるでしょう。
つまり、表向きは会社の制度である評価制度を、裏(ホンネ)では自分の能力開発やキャリア開発の道具として活用すればいいわけです。それを止めることは、会社にはできないのです。
作成・編集:人事戦略チーム(2015年6月9日更新)