評価の不満を解消するには(5)

評価の不満を解消するには(5)

 

(4)より続く

 

第七の、もうひとつ根本的な問題は、評価制度がいい悪いではなく、自分が評価されていると実感できないということがあります。

 

本来、適切なフィードバックがあれば、こういった不満が生じるとは思えません。また、評価結果に応じて、昇給・賞与や昇格・昇進・異動など人事上の処遇に反映させるのも、コミュニケーションのひとつであり、どのように評価されているのかを伝えるのに、実に有力な手段です。人事運用こそ、どんなコミュニケーション・ツールよりも、はっきりとメッセージを伝えることができるといえます。

つまり、まずは人事運用が適切に行われているかどうか、改めて確認することから課題解決に着手すべきでしょう。

 

もし、この種の不満が、特定の職種や部門に偏っているのであれば、その職種や部門におけるマネジメントそのものに、何かしらの問題があることを感じさせます。

会社全体で評価されている実感がないのであれば、本質的な意味においてコミュニケーション不全に陥っているといえそうです。これは評価制度という範疇を超えて、組織運営自体がうまくいっていないことを示唆しています。評価されていないといった不満は、あくまで表面的なものといえそうです。

 

中小規模の企業では、経営トップや人事責任者が日常的にMBWA(Management by Wandering Around)などの手法を実践することが、ある程度は不満を解消することに繋がるかもしれません。個々の社員に仕事のフィードバックをしたり、「ちゃんとみている」というメッセージを、暗黙裡に伝えたりすることは、十分に可能でしょう。

大企業であれば、ビッグデータの分析から評価の不満の原因を探り出し、社員主導のイベントなどインフォーマルな機会を意図的に設けることも含めて、さまざまな仕掛けを施すことが必要かもしれません。また、オフィスレイアウトや勤務管理体制の見直しなどを行って、マネージャーや同僚が毎日きめ細かく個々の社員から話を聞く仕掛けやきっかけを作り、それを当たり前の習慣にしていくことも望まれます。

 

評価についての不満は、絶えず生じる問題です。放っておけば、いつの間にか、不満があって当然、不平をいうのが普通、という状態に陥るでしょう。

そして、一つひとつは大した問題でなくても、不満が抑えきれなくなり、モグラたたきのように、次から次へと何かしらの問題が出てくるようになりがちです。多少の不満が出ているうちに、早め早めに対策を取ることがマネジメント上、肝要ではないでしょうか。

 

5回にわたって、評価に関する不満を解消するためのヒントをご紹介してきました。それらが、モグラたたきから脱却して、評価がマネジメントのレベルアップや人材育成などにつながる機会となる一助となれば、幸いです。

 

作成・編集:人事戦略チーム(2015617日更新)