日本は休みが少ない?(1)
このところ、連日、熱中症が心配される日々が続いています。早く夏休みをとって、一息つきたい方も多いのではないでしょうか。
さて、夏休みやゴールデンウィークの頃になると、休日・休暇について日本では取れる日数が少ないといった話題が多くなります。
たとえば、「データブック国際労働比較2015」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構 編集・発行)によれば、比較対象となっている日本・イギリス・ドイツ・フランス・イタリアの5ヶ国について、以下のようになっています。なお、数字はすべて2013年についてです。
表1:休日の国際比較
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週休日 |
週休日以外の休日(祝日等) |
年次有給休暇平均付与日数 |
年間休日合計 |
日本 |
104 |
15 |
18.5 |
137.5 |
イギリス |
104 |
8 |
24.8 |
136.8 |
ドイツ |
104 |
10 |
30.0 |
144.0 |
フランス |
104 |
10 |
30.0 |
144.0 |
イタリア |
104 |
9 |
28.0 |
141.0 |
週休日は、いずれも完全週休2日ということで年間104日と差はありません。週休日以外の休日では、法律で祝日を増やしてきた日本が最も多い日数となっています。
ところが、年次有給休暇の付与日数についてみると、明らかに日本が少ないと指摘できます。
また、有給休暇の取得率についてみますと、さらに日本の低さが浮かび上がります。
エクスペディア社のアンケート調査の結果(2014年12月11日エクスペディアPR事務局発表)によりますと、日本の有給休暇消化率は50%で、調査対象の12ヶ国中、11位で、何とか7年連続最下位を免れたそうです。ブラジル・フランス・スペインは100%の消化率で、最下位の韓国と日本以外は、70%を超える消化率となっています。
この結果は、厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」における年次有給休暇の取得状況が、全産業平均で過去5年間、40%台後半で推移している結果とも、概ね一致しているといえそうです。
そこで、単純に日本の有給休暇の取得日数を推定してみましょう。労働者1人当たりの平均付与日数が18.5日、取得率が50%とすると、日本は付与された有休休暇の半分を取得していると見做せますから、平均取得日数は9.25日となります。
その結果、日本の年間の実際の休日日数は128(104+15+9)日ほどと考えることができます。一方、フランスは年間休日の合計日数144日が、ほぼ全て実際に休日となっていると推定されます。
そうすると、日本とフランスの年間休日日数の差は、表1の年間休日日数の差の6.5(144-137.5)日よりも大きく、実際は16(144-128)日ほどとなります。この違いが、表2に見る日本の労働時間の長さの一因であることは間違いないでしょう。
表2:実労働時間の国際比較
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雇用者1人当たり平均年間総実労働時間 |
長時間労働者(週49時間以上の労働)の就業者に占める割合(%) |
日本 |
1,746 |
21.6 |
イギリス |
1,659 |
12.3 |
ドイツ |
1,313 |
10.5 |
フランス |
1,401 |
10.8 |
イタリア |
1,478 |
9.6 |
アメリカ |
1,795 |
16.4 |
日本とフランスの労働時間の差である345(1,746-1,401)時間は、1日8時間労働で換算して、約43日分に相当します。そのうち、16日分は実際の休日日数の差によって説明できることになります。
もちろん、休日日数の違いだけでなく、1日の所定労働時間の違い、時間短縮勤務の実施状況の相違、残業時間の差など、他の要因も大きいものと思われます。
なかでも、残業時間については、表2右欄の長時間労働者の比率を見ると、日本はその割合が高いといえます。残業時間の差が、実労働時間の長さにつながっている大きな要因であることを、示唆しているようです。
ちなみに、長時間労働者の比率は、男女別でみると特徴的で、男性は全労働者の平均値の1.5倍ほどの比率に跳ね上がります。これは、国による違いがなく共通に見られる傾向で、日本の男性は30%強、フランスの男性は15%強となっています。
つまり、日本では、休日・休暇が比較的少ないといった要因とともに、労働者の多くを占める男性の長時間労働者比率が高いことも、総実労働時間の長さの一因となっていることを窺わせます。
作成・編集:調査研究チーム(2015年7月15日更新)