日本は休みが少ない?(4)

日本は休みが少ない?(4)

 

(3)より続く

 

さて、休日・休暇に関する課題というと、日数とか有給休暇の取得率といったことに目がいきがちですが、忘れてならないのは、休日・休暇の質についてです。ワーク・ライフ・バランスを考える上でも、休日・休暇の質的側面は無視できません。

 

日本のように、ゴールデンウィーク・夏季(8月中旬)休業・年末年始休暇というように、休日・休暇が社会的にも一斉にまとめて実施される傾向が強いと、旅行など人の移動も集中してしまい、休日・休暇の過ごし方が物理的に大変なことになりがちです。毎年のように、高速道路の長い渋滞、空港やターミナル駅の混雑などが報じられますが、これでは休み明けが仕事にならないほど疲弊してしまうのではないかと、いつも危惧されます。

 

それでは、自分の都合で休日・休暇を取得するには、どうしたらいいのでしょうか。たとえば、休みを取る前の準備から、休み明けに職場に戻るまで、次のような点に留意する必要がありそうです。

 

1.いつ休むか計画を立てる

2.同僚に留守中のサポートを依頼する

3.留守にすることをみんなに伝える

4.上司に休暇が迫っていることを知らせる

5.休暇中の基本ルールを決める

6.整理整頓をする

7.休暇中は仕事のことを考えない

8.コミュニケーションを限定する

9.日常から離れる努力をする

10.復帰初日は無理をしない

11.留守中の情報は積極的に把握する

 

これらは、『長期休暇で「ゆっくり休む」ための11カ条』(Forbes JAPAN 2015718日配信)という記事で提案されている、アメリカ人が長期休暇をとってゆっくり休むためのポイントです。

14は、いわば事前準備、日本でいえば周囲(関係者)への根回しに相当するものでしょう。アメリカ人でも、いきなり休みを取って同僚や上司を慌てさせるのは、決して好ましいことではないのでしょう。

テレコミュニケーションが発達した現代らしいのは、“休暇中の基本ルールを決める(メールをチェックするかどうかなど休暇中の過ごし方のルールを決めておく)とか、 “コミュニケーションを限定する(休暇中にメールのチェックやビデオ会議への参加などの時間を制限するなど)というところでしょうか。

日本人では、休日・休暇中であってもスマホやPCを手放さず、仕事をしている人というのは、むしろ当然のように存在します。なかには、休みに仕事をしていることを自慢する人もいるでしょう。これでは、休日・休暇の質は低いと言わざるを得ません。

 

ちなみに、アメリカでは、仕事を意味するワーク(work)と休暇のバケーション(vacation)を組み合わせて、ワ―ケーション(workcation)という労働慣行が増えてきているそうです。

ワ―ケーションというのは、言葉の成り立ちから想像されるように、仕事と休暇を組み合わせたものです。実際には、1週間程度よりも長い休暇を取って、旅行などに出かけている労働者が、旅行先のホテルなどで、ある特定の日だけフルタイム(8時間労働)やハーフタイム(4時間程度の労働)で働くというものです。それ以外の日は、完全に休暇として過ごすので、家族などといっしょに過ごしながら、必要な仕事はタイムリーに片づけることができるそうです。

基本的には休暇なので、旅行の費用(交通費や宿泊費など)は労働者の負担となります。

ただ、従来のように、メールを毎日チェックしたり、いきなり電話やビデオ会議に呼び出されたりすることはないそうです。その代わりに、特定の日に集中的に仕事をして、レポートをまとめて提出したり、ビジネス・ミーティングに参加したりする点が、ワ―ケーションの特徴とされているようです。

 

(注)以上、ワ―ケーションについては以下の記事による。

ウォール・ストリート・ジャーナル日本語版2015626日記事

『あなたもいかが?米で増える「ワ―ケーション」』

CNN Money 20141117日記事

Feel like getting away? Don’t want to use a vacation day? Just combine work and vacation.

 

しかし、これでは、“休暇中は仕事のことを考えない(睡眠不足を補うとかリラックスするなど)ということは実現しそうにありません。実際、記事中にも、ワ―ケーションでは本当の休暇旅行で得られるような感覚はない、というワ―ケーション体験者のコメントも紹介されています。

 

休日・休暇の質を、仕事から離れてリフレッシュすることと定義するならば、結局のところ、ワ―ケーションも日本の休日・休暇の実態も、質的に高いレベルにあるとは、決して言えないでしょう。

あるタイミングで仕事から離れてリフレッシュすると、仕事自体の生産性が上がったり、新たなアプローチで仕事に取り組むことができるようになったりする、というようなことは、個人的な体験談としては、よく耳にします。

しかし、体系的組織的に労働生産性を向上させたり、より創造的なアプローチで仕事に取り組んだりするために、休日・休暇を戦略的に取得させる実例というと、研究機関や大学などの教育機関で行われているサバティカル・リーブ(研究休暇)くらいしか、なかなか思い浮かびません。

なかには、内部監査を定期的に実施するために、全社員に順次、1カ月程度の長期休暇を取らせる企業もあります。不正防止も、ある程度は、労働生産性向上につながるものではありますが、戦略的とは呼べないでしょう。

 

そもそも、多くの企業では休日・休暇について、取得日数などの労働法上の要請以上の問題意識は、あまりないのかもしれません。

少なくとも、休日・休暇がどのように仕事に役立つのか、といった観点からビッグデータの分析などをしてみる必要があるのではないでしょうか。そして、個人差や職種・職責による違い、職場や会社全体のカルチャーの違いなど、さまざまな要因から、どういった形で取得し、どのように過ごした休日・休暇が効果的と言えるのか、適切な検証が求められているように思います。

 

作成・編集:調査研究チーム(2015731日更新)