リファレンス・チェックのポイント(1)

 リファレンス・チェックのポイント(1)

  

日本でも中途採用がかなり一般化してきたせいか、近年、リファレンス・チェックを採用プロセスの一環として組み入れる企業が多くなってきました。

  これは、採用しようとしている人がどのような仕事をどのようにしてきたのかを、採用しようとしている企業が本人以外の情報ソースから確認するものです。通常、本人がその情報ソースを採用する側に紹介し(採用する側には知りようがないとも言えますが)、採用する側が電話やメールなどで紹介された情報ソースに接触し、これまでの仕事ぶりなどを尋ねることになります。

  

さて、リファレンス・チェックの言葉の意味や一般的な内容は、他の情報源にあたっていただくとして(注を参照)、ここでは筆者個人の経験を踏まえて、実践的なポイントを紹介したいと思います。

  

これまでに、筆者はリファレンス・チェックをする側にもされる側にも立ったことがあります。

  最初は、リファレンス・チェックをされる側でした。

  四半世紀以上以前のことですが、新卒で入社した企業からある外資系企業に転職しようとしていたときに、転職先の経営者からリファレンス・チェックを依頼されました。

  当時勤務していた企業では、親会社からの転籍・出向者が役員や管理職の大半を占め、実働部隊は一部の出向者と多くの中途採用者、その下に筆者のような新卒で入社した人たちや第二新卒で入社してきた人たちが担当者として働いていました。

  在職のまま転職しようとしていることは誰にも話していない状況だったので、リファレンス・チェックを依頼された時は困りました。何とか、転職に理解がありそうな人がいないかと考えました。

  そこで、同じ部署で既に数年いっしょに仕事をしていた中途採用者のプロジェクトリーダーの人と、1年後輩で同じ部署に配属になっていた新卒入社の人にリファレンス・チェックを受けてくれるように頼みました。転職経験がある人と、日常的にキャリアの話をしていた人を選んだことになります。

  転職先の経営者とリファレンス・チェックを依頼された2人が、それぞれ、どのような話をしたのか詳しいことはわかりません。ただ、後日、電話で話した相手のことを評価するコメントを双方から聞いた時は、安心しました。

  こうしたプロセスを経て、筆者自身の1回目の転職が実現しました。

  

そうした経験から数年が経ち、今度はリファレンス・チェックを行う立場に立ったことがあります。

  その当時勤務していた企業で、事業拡大に向けて人員を増やそうとしていた時のことです。中途採用の採用プロセスで実務的な事項を処理していた筆者は、書類選考、一次面接の実施、二次面接の手配とリファレンス・チェックの実施などを担当していました。

  そこで、いろいろな中途採用候補者の面接やリファレンス・チェックなどを行いました。そうした経験から得られたポイントをまとめてみましょう。

  

まず、リファレンス・チェックの依頼を受けられるかどうかが、大きな鍵となります。もちろん、リファレンス・チェックを拒否したからといって、それを理由として不採用と判断したことはありません。

  そもそも、リファレンス・チェックは必須の条件ではなく、お願いや依頼の事項です。現に勤務している会社の関係者には言えないという情況も理解できますし、社内の人間関係などのさまざまな事情により、頼むに足る上司・部下・同僚などがいないケースも珍しくはありません。

  ただ、一般的には、採用したい、一緒に働いて欲しい、と採用する側が積極的に思うような人は、ほぼ全員、リファレンス・チェックを行うことができるケースに該当しました。

  

次に、リファレンス・チェックを受けてくれる人の問題があります。

  採用しようとしている人とのコミュニケーションに問題があったのか、たまたま電話した時が忙しかったのか、理由はわかりませんが、明らかに迷惑そうなことがありました。そうした対応を装わなければならない何らかの事情があったのかもしませんが、こういう人をリファレンス・チェックの相手として紹介する理由や事情を、採用側はついつい考えてしまいます。少なくとも、採用の可否を判断する際に有利に働くことはないでしょう。

  

そして、リファレンス・チェックで尋ねるべき事項を事前に整理しておくことを忘れてはなりません。

  実際に質問する事項は、採用しようとしている本人が経験を買って採用しようとしている人か、その人のポテンシャルに賭けて採用しようとしているのかによって大きく異なりますし、リファレンス・チェックを受けてくれる人と採用しようとしている人との関係(上司と部下、部下と上司、同じ部署の同僚、違う部署の同僚、先輩と後輩など)によっても異なります。そのあたりを踏まえて適切な質問をするには、当然ながら、事前に質問項目を整理してメモしておくくらいの準備が必要です。

 

【注】たとえば、「日本の人事部」というサイトでは、次のように用語解説をしています。

http://jinjibu.jp/keyword/detl/777/

 

(2)に続く

 

                 作成・編集:QMS 代表 井田修(2016419日更新)