公的機関の助成金・補助金の活用について

 公的機関の助成金・補助金の活用について

  

はじめに:このコラムをご覧いただく方にご注意とお願い

 

はじめにお断りしておきますが、個々の助成金制度や補助金制度などについてのお問い合わせは、受け付けておりません。詳しくは、ご紹介しているウェブサイトをご覧いただくか、各制度を所管している機関までお問い合わせください。

  今回ご紹介するのは、個々の企業(営利法人)、特に中小企業を主に対象とするものです。個人や団体(商工会など)を対象とするものは除いています。

 

 さて、助成や補助を受けるべき分野(テーマ)を考えてみましょう。

 通常、大別すると、事業に関するもの(創業、設備投資などを含む)、資金調達(出資、融資、貸付など)に関するもの、雇用(高齢者・障害者・女性などの活用を含む)に関するもの、それ以外の特定のテーマ(先端技術開発、CO2削減、省エネ、保育園設立など)に関するものです。

  このうち、資金調達は助成金・補助金ではなく、出資や低利融資などの斡旋や保証などを行うものなので、ここでは採り上げません。

  助成や補助を受ける上で、こうした分野(テーマ)がはっきりすれば、自ずと見るべきサイトは絞られます。

  

1.事業に関するもの

 

 最初にご紹介するのは、事業に関するもの(創業、設備投資などを含む)です。

 

① 独立行政法人 中小企業基盤整備機構の中小企業ビジネス支援サイトでは、日本中の助成金・補助金・委託費のプログラムのなかから、条件にあうものを検索することができます。

 ただし、このサイトで検索できる情報は、主に商工業・サービス業に関するものが中心となっており、それ以外の業種のものは対象になっていません。また、申請書類の提出を受け付けるなど正規の募集期間に入っているものが対象となっているので、予備的なエントリーなどが必要なものは入っていないなど、必ずしも全ての助成金・補助金・委託費のプログラムが検索対象となっているわけではないことにも注意が必要です。

 

② 経済産業省の所管する分野では、本省のサイトよりも各地方局のサイトのほうが活用しやすいように思います。その一例として、関東経済産業局のサイトをご紹介します。ここでは、これから募集するもの、募集中のもの、今年度分は終了したものが、一目でわかるようになっています。テーマとしては、下請け中小企業や小規模事業者の自立促進、ものづくり・商業・サービス新展開、省エネ、ふるさと名物、などがあります。

 

③ 農林水産省の補助金等の事業は、担当部局別に一覧表を見ることができます。

 また、「逆引き辞典」で補助金だけでなく、融資や出資などのプログラムも調べることができます。ここには、水産庁のものも含まれています。

 同様の逆引き辞典は林野庁にもあります。

 

 

 

④ 国土交通省では、たとえば、関東運輸局で主に運送事業者向けの補助金があります。このように、所管する業界に直接関係のある助成や補助がある機関もあります。

 また、観光庁では、地域で協議会などを設けて、その団体に対して助成や補助を行うものが多いのですが、なかには個別の企業(宿泊施設)を支援するプログラムもあります。

 

 

⑤ 特許庁では、特定の業界に限定したものではなく、広く事業を運営する企業が特許や海賊版対策などを行う際に支援する制度があります。具体的には、特許料の減免制度や外国出願特許補助金・海外侵害対策補助金などがあり、かかる費用の半分を補助するといったプログラムとなっています。

 

2.雇用に関するもの

  

次にご紹介する分野(テーマ)は、雇用(高齢者・障害者・女性などの活用を含む)に関するものです。

  

① 厚生労働省では、HPのなかに「各種助成金・奨励金等の制度」という一覧があります。ここの「事業主に対する雇用関係助成金(総合案内)」を開くと、一覧表が出てきます。

 ここには、目的から適切な助成金を選ぶことができる「検索表」がありますので、詳細なテーマにそって該当するものを探すことができます。

 

② ほぼ同様のものは、各地の労働局のHPにもあります。たとえば、東京労働局HPにある「各種助成金制度のご案内」からも、目的にしたがって該当する助成金・補助金を探し出すことができます。

 

3.その他の特定テーマ

 

 特定のテーマに絞って行われる、助成金・補助金制度についてご紹介します。

 

① 総務省情報通信国際戦略局では、戦略的な情報通信技術について毎年、SCOPEという事業を通じて支援を行っています。特に「若手ICT研究者等育成型研究開発」には、中小企業枠が設定されており、採択率も4割程度となっています。

 

② 環境省では、CO2削減などをテーマにモデル事業や実証事業の公募を行っています。

 

③ 内閣府では、「仕事・子育て両立支援事業」の一環で、企業が保育園などを設立する際の助成を行っています。

 

④ 文部科学省では、「科学技術・学術関連事業」として、企業や研究機関・大学などを対象に支援を行っています。

  ただし、原子力・宇宙開発・次世代加速器・スーパーコンピューター活用・南極観測など、一般の企業が直接取り組むような課題ではないため、ご紹介は割愛します。

 文部科学省の所管では、大学や研究機関向けの研究費もあります。また、文化庁の所管するものについても各種の助成金制度・支援制度はありますが、基本的にビジネス関係というよりは、「芸術文化」「文化財」「国際文化交流・国際貢献」「美術館・歴史博物館」などに関する助成や支援が大半を占めます。いずれも、一般の企業の事業活動を対象としているものではありません。

 

4.地方自治体などが行うもの

 

 以上の13は、中央官庁が行うものでしたが、地方自治体が行うものも多くあります。ここでは、当事務所が位置する東京都千代田区について、ご紹介します。他の道府県や市区町村でも、同様のものがあると思われますし、それぞれの自治体の政策の基づく独自の助成金・補助金制度もあります。

 事業所が1か所であれば、その自治体のものが対象となるだけですが、複数の自治体に事業所が存在する場合は、それぞれの自治体の助成金・補助金制度を活用できることも十分にありますので、ご検討ください。

 

① 東京都の事業に関する助成金については、公益財団法人東京都中小企業振興公社の行う「助成金事業」全23種類があります。対象となる分野は、「製品開発」「製品改良」「販路開拓」「設備導入」「知的財産」「商店街」「創業」となっています。

 ここでは、現在助成金の申し込みを受け付けているものや、申し込みの予約を受け付けているものが、赤字で表示されており、一目でわかります。

  ちなみに融資については、東京都産業労働局の中小企業支援「金融」をご覧ください。「中小企業制度融資」「保証付融資制度」「動産・債券担保融資制度」といったものに加えて、「女性・若者・シニア創業サポート事業」(融資を行うのは都内の22信用金庫および15信用組合)もあります。

  

② 千代田区では、「産業財産権取得支援制度」「知的障害者を雇用する事業者への援助金」「中小企業の育児・介護支援」「次世代育成支援行動計画策定奨励金」の4種類の補助金制度があります。

 このうち、3種類までが、雇用・ワークライフバランスや育児・介護に関するものなので、業種などによる制限を意識しなくて済みます。

 

以上をとりまとめると、助成金や補助金を申請したいと思われたなら、まず分野(テーマ)を決めましょう。

  次に、その分野(テーマ)に関する助成金や補助金の情報を探しましょう。このときに、国の制度だけでなく地方自治体の制度も忘れずに、調べてみましょう。

  そして、募集要項などに目を通しながら、応募資格(中小企業の定義に該当するか?他の助成金・補助金・委託費の制度と重複していないか?既に別の支援策を受けていないか?など)、募集期間、支援の条件(対象者、対象となる製品や技術の革新性、社内体制の整備状況など)、支援額(上限額および支援比率)などを確認して、必要な書類を整えて、申し込むことになります。

  

一般に、助成金・補助金・委託費などの制度は、法律の制定・改定があると新設される傾向にあります。一方、既に運用されているものは、毎年繰り返し運用されることが多いのですが、なかには、時限立法などである年度を限りに打ち切られるものもあります。また、行政(政策)評価の結果、見直しが行われる制度もあります。

  言い換えれば、個々のプログラムは毎年変わるので、きめ細かく情報をおさえておかないと、つい見過ごしてしまう場合もあります。

  募集期間は春(2月~6月)が多いように思われます。特に、説明会は24月に行われるケースが多いので、その前にどのような制度があるかざっと調べて、自社の状況に合ったものを選んでおくと、より効率的な申請作業を行うことができそうです。

  もちろん、通年で募集するものや、春に始まっても数次にわたる募集や先着順(枠が残っているもの)といったものもありますから、夏以降であっても応募可能なものも少なくありません。

  提出する書類の種類と量は、おおむね、助成・補助の金額(上限額)に比例していると言えそうです。やはり、助成・補助額が数十万円のものは、書類作成に要する時間と手間は比較的少ない傾向にありますが、一千万円単位のものとなれば、書類作成ひとつをとっても相当の時間と手間がかかります。

  実際の作業としては、申請の締め切りまで1ヶ月を切っているのに、数百万~数千万円のものにゼロから応募しようとするのは、極めて難しいでしょう。

  採択されるかどうかは、一概に言えませんが、助成・補助の金額(上限額)が高いものほど、1回の申し込みで採用される可能性は低いのではないでしょうか。こうしたものでは、応募1回目はエントリーすることで自社の存在を募集機関側に知ってもらい、次年度(2回目)以降につなぐものと割り切って、複数年で助成・補助の獲得を目指すほうがいいでしょう。

 

さいごに:このコラムをご覧いただき、ありがとうございます

  

はじめにお断りしておきましたように、個々の助成金制度や補助金制度などについてのお問い合わせは、受け付けておりません。詳しくは、ご紹介しているウェブサイトをご覧いただくか、各制度を所管している機関までお問い合わせください。

  

作成・編集:経営支援チーム(2016615日更新)