助成金・補助金はただで貰える金?

 助成金・補助金はただで貰える金?

  

 助成金や補助金というと、ただで貰える金と誤解している関係者がいるかもしれません。

 確かに、必要な書類を作成・提出し(その後に面談やプレゼンなどを行うこともありますが)、適否を審査されて、支給対象が決定されるという、このプロセスだけをとらえれば、そうしたイメージをもつ人がいるかもしれません。しかし、実際に助成金や補助金を申請して活用したことがあれば、そうしたイメージが間違ったものであることは十分に理解されているでしょう。

  

 さて、助成金や補助金は、大きくふたつのタイプに分けられます。

 

 ひとつは、個別の事業に関する助成金・補助金です。これは、製品開発・技術開発や設備投資などを広く含んで考えることができます。特定の業界・業種に限定したものも多くあります。

 事業に関する助成や補助は、公的なものだけでなく、民間のもの(財団や基金などが運営するもの、民間企業単独の支援事業、民間企業と公的機関が共同で運営するものなど)も存在します。

 これらのものの中から、自社に合ったものを見つけ出します。そこで、各種の助成金・補助金等の一覧紹介サービスや検索サービスを提供しているウェブサイトなどから調べてみます。

 たとえば、助成制度をもつ財団に関する情報を集約した財団が運営しているもの、専門の士業関係者が集まって運営しているもの、全国を対象として有料で検索サービスを提供しているもの、主に首都圏を対象として無料で検索サービスを提供しているものなどがあります。

 そこから、いくつか候補となる助成・補助の制度が見つけて、申請作業にはいります。

 どのような助成制度・補助制度であっても、実際に申請手続きをするとすれば、事業や主要な製品・サービスについて、支援すべき対象であることをきちんと説明しなければなりません。文書にせよ口頭説明にせよ、経営者として自社の事業や製品・サービスを売り込むことに変わりはありません。

 助成金や補助金の申請を行うということは、特に経営者としての経験が浅い方にとっては、売り込みの練習の場を設けてもらっているようなものです。それで合格点を得られれば、結果的に助成金や補助金がついてくると考えることもできます。助成や補助をうけることができないという結果に終わっても、本番さながらの実践的な練習ができたと考えれば、決して無意味な作業というわけではありません。

  

助成金・補助金のもうひとつのタイプは、事業の種類や業種には関係なく、幅広く中小企業が利用できるものです。なかには、企業規模も問わないものもあります。具体的には、雇用、特許、マーケティング、省エネなどのテーマが考えられます。

 ここでは女性活用を例として、助成金・補助金制度の活用法を考えてみましょう。

 まず、新たに雇い入れるのであれば、“妊娠、出産又は育児を理由として離職した者であって、紹介日前において安定した職業に就いていない期間(離職前の期間は含めない。)が1年を超えているもの”を対象のひとつとして挙げている「トライアル雇用奨励金」を検討したいものです。

 雇用した人が職場に定着するために施策を打っていくのであれば、「職場定着支援助成金」があります。

 女性が働きやすい職場環境を作っていくということであれば、「両立支援等助成金」では次のような目的に応じて、それぞれ助成金があります。

 

①事業所内に保育施設を新設・増設・運営する

   ②育児休業制度を実際に円滑に運営するために

     育児休業を男性に取らせる

     育児休業の代替要員を確保する

     育児休業後に原職に復帰しやすくする

   ③仕事と介護の両立を図る

  

本来は女性に限定した制度ではありませんが、現実的には女性を対象とするケースが多いのではないかと思われるものとして「キャリア形成促進助成金」と「キャリアアップ助成金」があります。

 前者は、幅広い意味で従業員の教育や能力開発などを対象としています。

 後者は、有期契約労働者(いわゆる非正規社員)を正社員化したり、職業訓練や処遇改善を通じて正社員相当の能力や処遇を実現したりしようとするものなので、現に有期契約労働者の多くが女性である職場であれば、実質的に女性活用につながる助成金制度となります。

 そもそも、女性の活用を会社の方針として確立し実施していくのであれば、「女性活躍加速化助成金」を申請するという手段もあります。

 さらに、東京都では「女性の活躍推進等職場環境整備助成金」というものがあります。これは、職場のハードウエア面での環境(トイレやロッカー、仮眠室やベビールームなど)を整備したり、職場の運営面での環境整備(在宅勤務、モバイル勤務、リモート勤務などを実現するための費用、および介護休業や育児休業などによる代替要員や短時間勤務に対する人員補充などの費用の補助)を行ったりするのに対して支給されます。

 以上、女性を活用するという方針を例として、どのような助成金・補助金を得ることができそうかを考えてみました。高齢者や障害者などの雇用でも同様の考え方から、活用できる助成・補助のプログラムを探して選ぶことができます。

 なお、実際には、検討対象となりうるもの全てを申請するわけではありません。重複支給を禁止されているものもありますし、自社の方針や実情に合わないものを形だけ整えても、後々トラブルの元ともなりかねません。

  

雇用関係のものだけでなく、特許、マーケティング、省エネなどのテーマについても、同じようにアプローチしていけば、活用可能な助成や補助の制度を見つけて、必要な手続きをとることが可能です。

 ただし、注意が必要な点もあります。募集要項などに目を通しながら、応募資格、募集期間、支援の条件、支援額などを確認して、自社の方針や実情とのすり合わせを図った上で正式に申請手続きに入らないと、仮に助成金や補助金を得ることができたとしても、申請書類と実態が違いすぎていたり、助成金や補助金の支給を求める段階になってから、実は支出したものが支給対象に該当していなかった、などということが起こる危険性もあります。

 助成金や補助金の制度を活用しようとするときに、助成金や補助金を先に考えてしまい、それにあわせて事業や組織を運営しようとしてしまうことが、時に起こります。助成金や補助金を獲得することが目的化してしまい、本来やりたい事業とは異なる分野に出てしまったり、こういう組織でありたいと思っているのとは異なる組織になってしまったりすることがないように、注意が必要です。

 体力もあり能力もある若い人たちを多く雇って、ガンガン働いてもらいたいのに、助成金や補助金の条件を満たすために、高齢者ばかりを雇用してしまい、事業運営が思うようにならない、というのでは本末転倒です。

 間違っても、ただでもらえる金と誤解されることのないよう、ご注意ください。助成金や補助金は、その名の通り、事業や組織運営の一助となるものです。あくまでサポートです。メインは、自社の事業そのもので稼ぐものです。

  

作成・編集:経営支援チーム(2016621日更新)