(1)愛すべき会社を作りだすカルチャー
今回、ご紹介するのは、ハブスポット社において社員向けに自社のカルチャーをマニュフェストとしてまとめると同時に、従業員ハンドブック(規程や業務マニュアルなどを一冊にまとめたもの)として活用するために作成された資料です。
HubSpot Culture Code:Creating A Lovable Company(注1)
(Slideshare.net 上に2013年5月より公開されている全128枚のスライドです。今回の記事の中では、このスライドをHCCと略記し、引用しているスライドの番号をHCC-××の形で表記します。)
ハブスポットという会社(注2)は2006年に創業されました。インバウンド・マーケティング&セールスのソフトウエア(プラットフォーム)の開発・販売を事業とするITサービスの会社です。
この会社の特徴を一言でいえば、「俺たちはハブスポットだ!」「他の奴らとは違うんだ!」(HCC-13・14)という気概がある“ハブスポッター”と呼ばれる社員で構成されているところでしょう。なぜ、そうした社員が採用できるのか、また、社員がそうした姿勢で仕事に取り組むのか、その秘訣の一端がカルチャー・コードに表現されているはずです。
では、そのカルチャー・コード(HCC-17)とは、具体的には何でしょうか。
1.使命(ミッション)と結果(メトリクス)に偏執的なほどにこだわる
2.長期的な視点をもって顧客のために課題を解決する
3.オープンに共有し、はっきりと透明性をもつ
4.自律を好み、オーナーシップをもって仕事をする
5.最もよい処遇とは、驚くほどの人材とともに働くこと
6.人と同じことはするな、現状に疑問をもて
7.人生は短いことをしっかりと認識する
これらのカルチャー・コードについて述べる前に、忘れてはならない点が指摘されています。それは、カルチャーは意図するしないに関わらず、すべての組織がもっているものである(HCC-7)、ということです。
いかなる組織にもカルチャーがある以上、それが愛すべきものであれば、仕事もうまくいくし、人材も獲得できることでしょう。もちろん、愛すべきカルチャーが人材の獲得に効果的である以上に、実際に仕事をしていく上でより成果を上げるのに有効であり、規程集やマニュアル類を最小限に、帳票類や承認手続きを削減できるのでコストも時間も低減できるでしょう。
起業(しようと)する方は、どうしてもビジネス、特に営業や開発といった課題に目が行きがちです。実際に人を雇い、組織として仕事をしていくにつれて、役員も社員も誰もが忙しく精一杯仕事をしているのにもかかわらず、思ったように成果が生み出せない状況に陥りがちです。
そうなって初めて、どこかおかしい、こんなはずではなかった、という気持ちになる起業家や経営者の方々をよく見かけます。なぜ、そうなってしまうのか、考えるヒントがこのスライドの中にあります。
企業に限りませんが、組織があれば、その組織に固有のカルチャーが自然と(ごく稀に計画的に)でき上がっていきます。それが、事業戦略やビジネスモデルなどと整合性が取れていなかったり、人材や組織の実態が創業当初とは異なったものになり、その変質したカルチャーに今度は社員や組織が影響されてしまったりして、思うように業績が上がらないとか事業が成長しないというのは、実に多く見られます。
次回以降、ハブスポットの7つのカルチャー・コードを紹介し、企業文化や組織・人事の特徴を見ていきながら、カルチャーが事業の成否をどのように左右するのか、改めて考えていきたいと思います。
【注1】
スライドそのものは、以下のサイトをご覧ください。
http://www.slideshare.net/HubSpot/the-hubspot-culture-code-creating-a-company-we-love
同一の内容と思われるものは、ハブスポット社のHPでも公開されています。
http://www.hubspot.com/our-story
【注2】
ハブスポットの企業概要は、以下のサイトをご覧ください
文章作成:QMS代表 井田修(2016年10月25日更新)