AIが仕事を奪う?(4)

 

AIが仕事を奪う?(4

 

(3)より続く

 

このところ、AIやロボットに仕事を奪われるといった話を聞くことがあります。昨年来、そうした記事を目にする機会も少なからず、あります。

その一例というわけではありませんが、フォーブスによるとアメリカで2024年までに新規採用者数の減少幅が大きい職業として、次のようなものが挙げられています(注14)。なお、%の数字は、2024年時点における採用数の減少率として推定されているものです。

 

1位 郵便配達員:-28%
2
位 タイピスト:-18%
3
位 検針員(電気・水道など):-15%
4
位 ディスクジョッキー:-11%
5
位 宝石商:-11%
6
位 保険契約引き受け業務:-11%
7
位 仕立屋/テーラー:-9%
8
位 記者・アナウンサーなど(放送):-9%
9
位 新聞記者:-8%
10
位 コンピュータープログラマー:-8%

 

 これらは、AIやロボティクスの発展が直接引き起こすものというよりも、むしろ、消費者の嗜好の変化や海外の人材市場との競争条件の変化などによって引き起こされるもののほうが多いようです。

 1位に挙げられている郵便配達員などは、日本で考えてみれば、150年ほど前に新たに生まれた職業ですが、近年は年賀状ですら減少傾向にある(注15)ほど、郵便(手紙)離れが進んでいることのほうが、この職業の将来を悲観的にさせるものはないでしょう。AIやロボティックスの進歩・普及よりも先に年賀状の減少が進んでいることこそ、注目すべき点でしょう。

 

一方、新たに生まれる職業も当然たくさん、あります。たとえばイギリスの人材コンサルティング会社ブライトHRによると、近い将来、現実化しそうな新しい職業としてリストアップできるものが既に多くあり、その中には次のようなものがあると指摘しています(注16)。

 

1SNSアナリスト
2
.個人情報保護コンサルタント
3
.バーチャル弁護士/警察官
4
.人工人体パーツ製造者
5
.バイオメトリクス(生体)認証専門家
6
.自己開発・学習プログラマー
7
AI(人工知能)ファッション・デザイナー
8
.人口生命体デザイナー/科学者/エンジニア
9
.余生プランナー
10
.宇宙設計士
11
.風力発電農家
12
.クロロフィル・エネルギー技術者
13
.ゲノム開発者/設計者/デザイナー
14
.ネット司書
15
.ネット恋愛・友情カウンセラー/セラピスト

こうしてみると、新しく生まれてくる職業は、AIが実用化されるからこそ成立するものが多いことに気がつきます。特に、バーチャル弁護士/警察官とAIファッション・デザイナーは、AIをダイレクトに活用しているものです。

また、そのほかのものもAIを抜きにしては仕事にならないのではないかと推測されるものばかりです。たとえば、風力発電農家にしても、電力ネットワークに売電するのであれば、その電力ネットワークの運営にAIが重要な役割を果たしている以上、AIの発展なしには生まれない職業であると言えます。ネットを抜きにしては成り立たない職業(SNSアナリスト、個人情報保護コンサルタント、バイオメトリクス認証専門家、ネット司書、ネット恋愛・友情・カウンセラー/セラピスト)にしても、AIなしのネットが考えられない以上、AIがなければ成立しない職業です。

AIそのものが社会的なインフラとなりつつある現在、これからの職業でAIと関わらないものを探し出すことのほうが難しいでしょう。

 

欧米の傾向だけで日本や世界全体の傾向を予測することは無理があるとしても、そもそも職業が社会的分業のひとつの表れである以上、こうしてみると「AIやネットが発展するから○○の仕事がなくなる」といった、単純な図式は成立しないことだけは確実なようです。

実際、いまある職業のうち、50年前、100年前にはまだ存在していなかった職業も数多くあります。既に存在していた職業であっても、仕事の中身は全然違うというものが大半を占めるでしょう。特にIT関連の職業については、そうした傾向が強いでしょう。

どのような職業であっても、これまでITの影響を受けてこなかった職業がほとんどないのと同様に、今後、AIやネットの影響を受けないものは皆無でしょう。ポイントは、その影響をうまく取り込んで顧客ニーズに応じていくことができれば、その職業(もしくはその職業の中で成功する人)は生き残っていくことができるということです。

それでは、そのためのヒントは何かあるのか、連載の最後として次回に考えてみたいと思います。

 

(5)に続く

 

【注14

詳しくはフォーブス・ジャパンの以下の記事を参照してください。

http://forbesjapan.com/articles/detail/14633

 

【注15

ガベージニュースの分析記事によると、年賀状は2003年の44.5億枚強をピークに、2016年は28.5億枚強にまで急減している。詳しくは、以下の記事を参照してください。

http://www.garbagenews.net/archives/2114695.html

 

【注16

詳しくはZUU online の以下の記事を参照してください。

https://zuuonline.com/archives/132093

 

 

作成・編集:経営支援チーム(20161224日)