新春CFO座談会(1)~今年の目標は~

 

新春CFO座談会(1)~今年の目標は~

 

― 本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。年頭に当たり、ベンチャー系の企業でCFOとしてご活躍の方々にお集まりいただき、今年の抱負や仕事上の問題などを幅広く語っていただければと思います。

 

以下の座談会では、一部、守秘義務を要する事項に言及しているものもあるため、個人名などを特定されないよう、お話しいただいた方はすべて匿名とさせていただきます。それぞれの方々が所属される企業について語っていらっしゃる内容も、企業名を特定されないように、一部、変更して掲載しています。

 

ご参加いただいた方々のプロフィールは以下の通りです。

Aさん(男性30歳代):金融関係の会社勤務からベンチャーへ転職。その後、あるスタートアップに創業メンバーとして参画したのち、現在の金融系ベンチャーにCFOとしてヘッドハントされる。

Bさん(女性30歳代):シンクタンク勤務ののち、ITサービスのベンチャーに転身。いくつかのスタートアップを経て、最初に転職したITベンチャーにCFOとして戻る。

Cさん(男性30歳代):友人たちと学生時代にIT関連のベンチャーを立ち上げ。管理や営業など、技術系が多い友人たちをカバーするうちに自らCFOに。

Dさん(男性40歳代):税理士法人を経て、経理事務担当として中小企業で働くうちに、管理部門全般の実務を経験。現在、成長著しい飲食サービス会社で管理部門の責任者に。

Eさん(男性50歳代):商社出身。関連会社や合弁会社の経営に携わった経験をもつベテランのCFO。子会社のITサービス会社のIPOに際して財務経理の責任者として陣頭指揮を執る。その後、別のベンチャーにCFOとして転じ、現在、上場を目指している。

 

― それでは、まず始めに、2017年の目標とか抱負などを伺いたいと思います。

 

Aさん 会社としての目標は、事業基盤を確立することです。弊社はITを活用した金融サービスをビジネスにしています。個々のサービスはここ2年ほどで確実に立ち上がってきているのですが、事業として見るとまだまだです。

 

― 特にCFOとして、これというものはありますか。

 

Aさん 資本政策や資金計画については、現在、検討中です。実は、いま入居しているオフィスの賃貸契約が9月にきれるので、移転先を探しています。社員数も増えていますから、オフィススペースを拡張したいのですが、山手線の中では難しいかもしれません。

 

― 資金面もご苦労がありそうですね。次に、Bさんはいかがですか。

 

Bさん 会社としての目標はもちろん、ありますが、CFOとしては資金調達ですね。

 

― 増資ということですか。

 

Bさん そのつもりです。既にVC1社に参画していただいてはいるのですが、サービスを継続的に改善していくのにエンジニアの採用などが必要です。また、サービスメニューを増やしていくのに、他社を買収する方向で、候補先を検討しています。そのためにも、億単位になりますが、一定の資金が必要となっています。

 

― Cさんはいかがですか。

 

Cさん 私たちは、創業して10年を超えていますから、もうベンチャーとは呼べないですね。まずは、今期の決算をしっかりと着地にして、来期の課題に取り組んでいきたいですね。

 

― Cさんのところは3月決算ですね。

 

Cさん ええ。年度のほうを重視していますから、正月だから目標を改めて立てるというわけではありません。個人的には、昨年、結果がでたダイエットをさらに続けて、あと3キロくらいは落としたいですね。

 

Dさん うちは、IPOを目指しています。今年というわけではないのですが、遅くとも東京オリンピックまでには上場しているつもりです。具体的な準備に入ることができるように、まずは業績面をしっかりするのが、今年の目標です。そのために、トップラインをしっかりとする以上に、利益率を確実に向上させてしていくのが、会社全体の課題です。

 

― CFOとしての打ち手といいますと?

 

Dさん 昨年、一昨年と店舗の改装や買収などがありましたから、今年は今のところ、大きな投資は予定していません。その分、オペレーション・コストをしっかりと見ていきたいと思っています。特に、FL(食材費と人件費)については、営業部門と毎日やり合うくらいでいいかなと思います。オフィスにいて数字をいじっているよりも、現場といっしょに数字を改善できたらと考えています。

 

Eさん 弊社はIPOが具体的なスケジュールに入っています。具体的な日程は申し上げられませんが、今年のイベントとしてやり切ります。

 

― ところで、皆さん、去年の目標は覚えていらっしゃいますか。

 

Bさん 去年は、現在の会社に戻ったばかりでした。目標も何も、リストラをした直後でしたので、まずは、経営者と残った社員の間のコミュニケーションを何とかするのに、2カ月くらいかかりました。毎日、数名ずつ集めて、ランチや夕食をいっしょにしながら、話し込みました。お陰で人間が丸くなりました。

 

― Bさんが戻られた経緯は後ほど伺うとして、他の方はいかがですか。

 

Cさん 毎年、あっという間に1年が終わってしまう感じです。創業当初は1年が終わる感覚すらなかったのに比べたら、少しは落ち着いてきているのかもしれませんが。目標というよりも、目の前の課題を何とか解決するのに手一杯ですね。

 

Eさん 去年の目標は、IPOの準備を軌道に乗せることでしたから、着実に仕事を進めてきたというところでしょう。初めてのことではないので、ある程度は、手順とか押さえるべき事項はわかります。早め早めにCEOや経営幹部にやってほしいことを仕掛けてきました。

 

Dさん 毎年そうですが、年初の目標や見通しは、半分、いや3分の1も実現しないですねえ。次々に新しい話がでてきて、それに取り組むという感じでしょうか。うちは、毎年のように、他社さんのお店を買収したり業態転換を図ったりと、チャレンジすべきものが急に出てきますから。

 

― 目標を立てる前に、新たな課題が出てくる?

 

Aさん 私たちが事業化しようとしているのは、いわゆるフィンテックと呼ばれる分野です。この分野は正に成長途上ですし、グローバルに次々と新しいサービスや競争相手がでてきます。何か目標を定めるというよりも、ITを使って金融を一人ひとりのものにしていくというビジョンが実現できるのであれば、まずはトライしてみます。

 

― そのためにも、資金や人材、技術などが必要ですね。

 

Aさん 幸い、人材や技術は目途が立っています。資金面も、私が加わる前に比べたら、多少は改善しました。ただ、借入に偏っているので、今年は手を打たないといけません。それも早急に、です。

 

― すばやく手を打つといえば、Dさんのところも、昨年は即断即決を迫られたそうですね。

 

Dさん 去年は、ある同業他社から引き受けた店舗を軌道に乗せるはずでしたが、2ヶ月で無理だとわかって、別の外食チェーンに売却しました。即断即決というか、会社の目標とはいっても、CFOとしてはダメなものはダメとはっきりさせて、すぐに手を打ったのは正解だったと思います。

 

(2)に続く

 

文章作成・編集:QMS+行政書士井田道子事務所(201714日更新)