起業家の働き方改革(1)

 

先月、あるベンチャー企業の経営者とのミーティングを予定していたところ、直前になって体調不良ということでキャンセルされたことがありました。既に先方のオフィスが入居しているビルに到着していましたが、仕方なく帰るしかありませんでした。

 

ベンチャーに限りませんが、経営者は多忙なものです。つい無理を重ねてしまった結果、体調を崩してしまうことはやむを得ないかもしれません。こうしたドタキャンでも、1分でも事前にアポをキャンセルされれば、まだいいほうかもしれません。

いつまで待っても連絡がつかないのが最も困ります。病気に限らず、事故や災害に巻き込まれたり、交通機関のトラブルに遭遇してしまったりなど、本人にはまったく落ち度がないことが原因であっても、待たされるほうは、時間は消費されるままで、取り返しがつきません。待っている間に他の仕事を処理できればいいのですが、そういう時に限って処理できそうな仕事が見つからず、待っている時間だけが過ぎていきがちです。待ち時間というのは、そうそう他に転用するわけにはいきません。

もちろん、再度、アポを設定し直してミーティングをすればいいのですが、今日行うミーティングと明日とではタイミングが違います。どちらが相互にメリットのより多いミーティングとなるかはわかりませんが、再度行うミーティングまでに過ぎ去る時間が1時間でも多いほど、ミーティングの意味が失われていくことが多いように感じてきたのは、筆者だけでしょうか。

実際、再度のミーティングを行わないことのほうが多いかもしれません。それだけ、タイミングのもつ意味は大きいのです。

 

この出来事をあるVC関係者に話したところ、次のように言われました。

「それは、要するに自己管理ができていないということでしょう。本人の自己管理、家族管理、事業管理と段階的にマネジメントは難しくなります。自己管理もできない人に、起業家として事業のマネジメントができるはずがないでしょう。」

 厳しい表現かもしれませんが、自己管理ができない人には、起業とか経営者として事業をリードしていくことは、やはり無理でしょう。

とりわけ、起業の準備や起業直後では、起業家本人だけとか手伝ってくれる人が若干名ということが標準的でしょう。起業家は個人事業主みたいなものですから、すべて本人が直接対応しなければ話が進みません。そうした責任があることを分かっていれば、自己管理を適切にして関係者に迷惑をかけないように努めるでしょう。

不幸にも、周囲に迷惑をかけることになってしまったら、できるだけ手早く相手に連絡を取るなどして、自分の事情を相手に伝えて理解を得られるようにした上で、相手の事情も考慮して次の打ち手を捻り出すことになります。

こうしたトラブル対応の巧拙が、実は、起業したビジネスが伸びていくかどうかの分岐点になることもあります。

起業は自動的に事業の成長を意味するわけではありません。さまざまなトラブルを乗り越えることで、事業を成長させていくのです。体調不良でミーティングをキャンセルするにしても、そのやりかたや事後の対応で、関係者からの信用を得ることができるかもしれませんし、反対にまったく相手にされなくなる虞も大いにあります。

起業した事業も会社も、世間での認知度は一般的にいって低いのが当然です。急なトラブルに見舞われたとしても、災い転じて福と成すことができるように、絶えず、頭の中で状況のシミュレーションを行っておいて、いざという時に慌てずに、相手に迷惑ができるだけかからないように対応する術を身につけておくのも、起業家の基本的なビジネススキルのひとつと言えるのではないでしょうか。

 

(2)に続く

作成・編集:経営支援チーム(2017711日)更新