創業補助金の採択事例にみる創業動向について(9)

⑥教育

 

 教育に関するものには、まず、子供の教育に直接関係するものがあります。

 次に例示するものからわかるように、事業の独自性(既存の事業者との違い)は、学習や教育のシステムそのものにありそうです。具体的には、教育の手法であったり、教材であったりするのでしょう。

 

・次世代に向けた個別自立学習塾の展開(28・福井)

・中学生高校生を対象とした学習塾とシステム教育の実践(27・北海道)

・障害児を主に対象とした能力開発教室の展開と独自教材の開発事業(27・熊本)

・モンテッソーリ教育を取り入れた子供と保護者のための育児支援施設の実施(26・長野)

 

 教育に関するものは、対象を子供に限定しているわけではありません。採択件数としては、むしろ子供以外を対象とするもののほうが主流と呼べるでしょう。これも少子化の影響と言えるのかもしれません。

 

・世界に通用する空手選手育成のための空手道場の運営(26・埼玉)

・誰でも楽しめる安全でゲーム性の高いブラジリアン柔術スクールの経営(27・神奈川)

・外国人留学生アルバイト特化型の教育事業の展開(26・東京)

・農業ビジネス大学校および農業ビジネスプラットフォーム運営事業(27・愛知)

・植物工場を経営できる起業家の育成と植物工場の技術開発の実施(26・東京)

・絵巻き寿司を活用したインストラクター認定事業等の展開(28・神奈川)

・映画業界で活躍できる人材の育成と供給を行うスクール及びイベント事業の運営(26・大阪)

 

 こうした子供以外の一般向けの教育サービスで起業する場合、大きくは3種類の起業のアプローチが見られます。

第一は、外国人留学生や映画業界で活躍したいと思っている人など対象を絞っていくものです。次に、空手とかブラジリアン柔術というように分野や競技種目などに独自性を打ち出すものです。最後に、農業ビジネス大学校とかインストラクター認定事業というように、教育サービスのシステムを確立するものです。

 

⑦美容

 

 創業補助金で採択された業界業態のなかで顕著に多かったものが、美容に関するものです。これは、美容業界(美容室、エステティックサロン、ネイルサロンなど)が過当競争の状態に置かれていることのではないかと想像させるものでもあります。

 

・トータルコーディネートを行い地域活性化コミュニティとなる美容室創業事業(29・長野)

・「働く女性を応援する」地域コミュニティ創造型エステティックサロンの開業(28・高知)

5060代大人の女性の髪の若返りにより「美の幸せ」を提供する美容院(27・愛知)

4060代女性向けのネイルサロン経営とネイルグッズの開発・販売(27・愛知)

・ママさん美容師積極雇用で高齢者への訪問美容を提供する地域密着型美容室の展開(26・静岡)

・カイロプラクティックとピラティスによる姿勢矯正美容サロンの展開(27・岡山)

 

 美容というと、女性だけが顧客ターゲットというわけでもありません。男性をターゲットとするものも当然、あります。

 

・男性専用の美容と健康と癒しを提供するトータルライフサポートサロン(27・福岡)

 

 製販のところでも見られたように、その業界そのものでなく、その業界のビジネスをサポートするものも起業アイデアとしてありえます。その一例として次のようなものがあります。

 

・東北地方の年商210億円規模の美容院特化型経営コンサルティング(26・宮城)

 

 以上、美容関連で採択されたもののなかから典型的なものをご紹介しました。地域・顧客対象・従業員の特徴など何らかの絞り込みで特徴のある事業を目指しているものが多いようです。

 

(10)に続く

         作成・編集:QMS代表 井田修(2017921日)更新