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ティール組織~マネジメントの常識を覆す次世代型組織(1)

ティール組織~マネジメントの常識を覆す次世代型組織

 

(1)本書の概要

 

 今回、ご紹介するのは、原著が2014年に発行されて以来、組織やリーダーシップに関する分野で注目を集めている本です。

 

ティール組織~マネジメントの常識を覆す次世代型組織

(フレデリック・ラルー著、鈴木立哉訳、嘉村賢州解説、

英治出版株式会社より20181月発行)

 

原著のタイトル(“REINVENTING ORGANIZATIONSA Guide to Creating Organizations Inspired the Next Stage of Human Consciousness”)にあるとおり、この本は単なる組織論ではなく、先進的な実例を紹介することに数多くのページを割きながら、人間の認識や心理学などの知見に基づき、新たな段階における組織のあり方を考察し、著者がティールと呼ぶ組織へと変革していくプロセスやそのポイントを述べています。

 

本書は3部から構成されています。

「第Ⅰ部 歴史と進化」では、組織を人間および社会の発達段階(パラダイム)に応じて、衝動型(レッド)組織、順応型(アンバー)組織、達成型(オレンジ)組織、多元型(グリーン)組織、進化型(ティール)組織の5類型に分けて、それぞれの特徴を述べます。ここで色のメタファーを使っているところが本書の特色のひとつで、発達心理学や認知心理学などからの様々な知見を組織の発展段階の考察に借用しています。

「第Ⅱ部 進化型(ティール)組織の構造、慣行、文化」では、進化型(ティール)組織に特徴を、自主経営(セルフ・マネジメント)・全体性(ホールネス)・存在目的(エボルーショナリー・パーポス)という3種類の突破口(ブレイクスルー)から描いています。具体的には、著者がパイオニアとなる組織として紹介する次の12の法人のストーリーを通じて、進化型(ティール)組織の特徴が語られます。

 

【本書で登場する12法人】

AES(アプライド・エナジー・サービス、USA

BSO/オリジン(オランダ)

ビュートゾルフ(オランダ)

ESBZ(ベルリンセンター福音学校、ドイツ)

FAVI(フランス)

ハイリゲンフェルト(ドイツ)

ホラクラシ―(法人としてはホラクラシ―ワン、USA

モーニング・スター(USA

パタゴニア(USA

RHD(リソーシズ・フォー・ヒューマン・ディベロプメント、USA

サウンズ・トゥルー(USA

サン・ハイドローリックス(USA

 

それぞれの法人の事業概要や組織運営などについては、注1に挙げているウェブサイトなどを参考にしてください。

「第Ⅲ部 進化型(ティール)組織を創造する」では、既存の組織(その多くは達成型(オレンジ)組織かと思われます)から進化型(ティール)組織へと変革していく際のプロセスやポイントを述べます。といっても、変革プログラムや導入マニュアルなどといったものがあるわけではありません。進化型(ティール)組織は、組織モデルの普及という点ではまだまだ黎明期にありますから、プロセスやポイントが説明されるに留まります。

 

 実は、本書を読んでみて最も驚いたことは、筆者が以前勤めていた組織や直接間接に見聞きしたユニークな組織(残念ながら当時の筆者には単にユニークな組織という程度の認識しか持ち合わすことができませんでした)と、実によく似ている点が多々あったことです。もちろん、本書で紹介されている進化(ティール)型組織そのものにぴったり一致するという意味ではなく、組織運営・人事慣行・リーダーシップなどの面で、本書が指摘する特徴をもつものがあったということです。

 本書で考察対象として紹介されている法人は、日本ではあまり馴染みのないもののほうが多いのではないかと思われます。そこで、次回以降、本書で語られる進化(ティール)型組織について、こうした体験や見聞も織り込みながらご紹介することで、日本の組織にもその萌芽や展開が既に見られることを説明できればと思います。

 

【注1

AES(アプライド・エナジー・サービス)

現在のAES社のウェブサイトは以下のとおりです。

http://aes.com/

 

BSO/オリジン

フィリップスのグループに入った後にフランスのIT企業アトスと合併することになり、現在は法人としては残っていません。なお、現在のアトスのウェブサイトは以下のものがあります。

https://atos.net/en/about-us/company-profile

 

・ビュートゾルフ

オランダの地域医療・介護サービスのNPOですが、日本法人については以下のウェブサイトがあります。

http://buurtzorg-services-japan.com/

2014年にCEOヨス・デ・ブロックが日本で行った講演の資料も公表されています。

http://www.glafs.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2015/08/3Jos_de_Blok.pdf

 

ESBZ(ベルリンセンター福音学校)

この教育機関のウェブサイトは以下のものです(ドイツ語)。

http://www.ev-schule-zentrum.de/aktuell/

なお、英語の資料としては、たとえば次のような概要紹介のものがあります。

http://www.gels.asia/esbz/

https://www.theguardian.com/world/2016/jul/01/no-grades-no-timetable-berlin-school-turns-teaching-upside-down

 

FAVI

このフランスの自動車部品メーカーのウェブサイトは以下のものです(フランス語)。

http://www.favi.com/

この会社のストーリーをまとめた英文の資料(2006年時点)が公開されています。300ページ近いもので、25年以上の経緯や組織運営の詳細が紹介されています。

http://uk.ukwon.eu/File%20Storage/5160692_7_The-story-of-favi.pdf

 

・ハイリゲンフェルト

ドイツの医療サービス企業のウェブサイトは以下のものです(ドイツ語)。

https://www.heiligenfeld.de/

 

・ホラクラシ―(法人としてはホラクラシ―ワン)

ホラクラシ―ワン社を設立し、ホラクラシ―という組織運営モデルを開発・普及に当たっているブライアン・J.ロバートソンが自らホラクラシ―について述べた本は、既に日本でも出版されています。

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784569827711

ホラクラシ―の導入例として注目を集めた企業のひとつザッポス社について、CEOト二―・シェイのインタビュー記事があります。

https://www.dyna-search.com/jp/23981

会社としてのホラクラシ―ワンについては、以下のサイトを参照してください(英語)。

https://www.holacracy.org/holacracyone

 

・モーニング・スター

このトマト加工会社のウェブサイトは以下のものです(英語)。

http://www.morningstarco.com/

特に自主経営に関する情報提供・学習のためのサイトも用意されています(英語)。

http://www.self-managementinstitute.org/

 

・パタゴニア

ウェブサイトは一般的なオンラインショップのように見えますが、“インサイド・パタゴニア”のところに会社の方針や組織運営などが明示されています。

http://www.patagonia.jp/home/

 

RHD(リソーシズ・フォー・ヒューマン・ディベロプメント)

この非営利組織については、以下のウェブサイト(英語)を参照してください。

https://www.rhd.org/

 

・サウンズ・トゥルー

この会社のウェブサイト(英語)もオンラインショップとして一般的なものに見えます。

https://www.soundstrue.com/store/

ただし、“about us”のところには、職場に連れてきているペット(主に犬と猫)と社員の紹介があります。また、既に亡くなってしまったペットについても、記録が残っています。

https://www.soundstrue.com/store/about-us/sounds-true-dogs

 

・サン・ハイドローリックス

この流体制御・エレクトロ二クスの部品開発製造企業のウェブサイトは以下にあります(英語)。

http://www.sunhydraulics.com/

なお、上場企業のため、株価情報(以下のサイト)や投資家向け情報などもあります。

http://www.sunhydraulics.com/node/64139

  

文章作成:QMS代表 井田修(2018515日更新)