働くのに最高の職場(2018年調査)

働くのに最高の職場(2018年調査)

 

 ご存知の方も多いと思いますが、今年もまた、グラスドア社より“Best Places to Work Employees’ Choice Award”が発表されました。その直近5年の結果をまとめてご紹介したものが表1です。対象はアメリカ合衆国の大企業です。

 

1:直近5年間のベスト10の動向(注1)

 

2014

2015

2016

2017

2018

(今年の発表)

グーグル

Airbnb

ベイン

フェイスブック

ベイン

ベイン

ベイン

フェイスブック

ベイン

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ

ネスレ・ピュリナ・ペットケア

ガイドワイア

BCG

BCG

インNアウト・

バーガー

F5ネットワークス

ハブスポット

グーグル

インNアウト・

バーガー

プロコア・テクノロジーズ

BCG

フェイスブック

ワールドワイド・

テクノロジー

グーグル

BCG

シェブロン

リンクトイン

ファスト・

テクノロジー

ルルレモン

リンクトイン

HEB

BCG

インNアウト・

バーガー

ハブスポット

フェイスブック

インNアウト・

バーガー

グーグル

リンクトイン

ワールドワイドテクノロジー

グーグル

マッキンゼー

ネスレ・ピュリナ・ペットケア

アドビ

セントジュード・チルドレンズ・リサーチ・ホスピタル

ルルレモン

10

メイヨ―・

クリニック

ズィロウ

パワー・ホーム・リモデリング

アルティメイト・

ソフトウエア

サウスウェスト航空

 

今年の特徴は、2位にランクインしたズーム・ビデオ・コミュニケーションズです。

この会社は、表2に示すとおり、中堅中小企業では昨年5位にランキングされており、事業規模が急激に成長しながら従業員満足度も高めているものと思われます。これを同時に実現するのは、なかなか大変で、多くのベンチャー企業が越えられない壁でもあります。実際、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズでも、カルチャーの変質を指摘する声もある(注2)ようで、今後も注目すべき存在です。

反対にランクを下げて注目を集めるのが、フェイスブックでしょう。今年はさまざまな批判や不祥事に見舞われていることが、多少なりともマイナスに影響していることを窺わせます。

 

2:直近5年間の中堅・中小企業ベスト10の動向(注3

 

2014

2015

2016

2017

2018

(今年の発表)

モトリー・フール

マドワイア

グリーンハウス・

ソフトウエア

シルバーライン

ヒープ

ファスト・エンタープライズ

グランド・

ラウンズ

イルミネート・

エデュケーション

ニューホーム

スター

ホライゾン・イノベーションズ

エヴォレント・

ヘルス

クラウド・ロックス

エンテロ

ネクストセンチュリー

シルバーライン

インタクト・

コーポレーション

インストラクチャー

セイルポイント・

テクノロジーズ

アクセラレーションパートナーズ

マーケティング360

チューブモーグル

ウィロー・ツリー

シート・ギーク

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ

デジタル・プロスペクターズ

インスタート・

ロジック

ヴェンテラ・

リアルティ

メトロマイル

オプローンズ

ゲット・ユー・ワイアード

クアントキャスト

ヘルス・

カタリスト

クラッシィ

グリント

ウィーヴ

クワーキー

プレゼンス・

ラーニング

アサナ

ライフ.チャーチ

マルーフ

スパイス

ワークス

ファスト・エンタープライズ

センデロ

CBインサイト

ハイスポット

10

フェイスライフ

ディマンドベース

ライブ・ランプ

カーシールド

ピーボディ・プロパティーズ

 

 事業環境の変化や自社の事業モデルの変化などに対応する余裕とか余地が小さいであろう中堅・中小企業については、ベスト10に連続してランクインする企業が少ない傾向があります。今年は、昨年5位にランキングされていたズーム・ビデオ・コミュニケーションズが大手企業の第2位になったり、昨年の第1位のシルバーラインが3位にランクインしているなど、安定して評価されている企業も目立っています。

次に、ベスト10だけでなく、大手企業の上位100社及び中堅・中小企業の上位50社という従業員満足度の高い企業全体の特徴を業種別に見てみましょう。

 

32018年大手企業上位100社の業種別構成

業種

社数

累計%

コンピューター関連

20

20

メディカルサービス

14

34

ITサービス

8

42

金融

7

49

小売

6

55

コンサルティング

5

60

メディカル製品

4

64

会計サービス

4

68

航空・宇宙

3

71

産業機器製造

3

74

外食

3

77

不動産

3

80

人材サービス

3

83

卸売

2

85

ホテル

2

87

連邦政府機関

2

89

建設・建築

1

90

食品製造

1

91

その他サービス

9

100

 

 大手企業の上位100社については、コンピューター関連(ハード、ソフト、システム、セキュリティなど)が全体の5分の1を占め、次いでメディカルサービス(病院など)となり、この2業種だけで3分の1を占めています。

 コンピューター関連やITサービスといった開発重視の企業が人材を重視するのは予想通りですし、ベスト10にも入っています。

一方、メディカルサービスは、ベスト10にはひとつも入っていませんが、上位100社には14社・機関が入っています。これは、コンピューター関連とは別の意味でビジネスが人材に大きく依存しており、医師・看護師・薬剤師・医療技術者・医療事務スタッフ・一般の職種の人々など多種多様な人材が幅広く活躍できる環境が求められます。そして、極めて幅の広い職種で構成される従業員の満足度を高めるには、さまざまな工夫が必要でしょう。そうした試みが成功してここにランクインするような組織は、結果(患者の満足度や財務上の業績など)も高いのではないかと想定されます。

 メディカルサービスほどの職種の幅広さは見られないかもしれませんが、同様の傾向は小売・コンサルティング・会計サービス・航空宇宙・外食・ホテル・連邦政府機関などにも当てはまるかもしれません。

なお、連邦政府機関の1機関はNIHNational Institute of Health 国立衛生研究所)なので(注4)、人材マーケット上はメディカルサービスとほぼ一致するため、業種はメディカルサービスでカウントすべきかもしれません。

 

42018年中堅・中小企業上位50社業種別構成

業種

社数

累計%

コンピューター関連

16

32

広告・マーケティング

6

44

不動産

6

56

金融

4

64

小売

4

72

ITサービス

2

76

自動車ディーラー

2

80

人材サービス

2

84

メディカル製造

1

86

その他サービス

7

100

 

 中堅・中小企業の上位50社を業種別に見ると、コンピューター関連が3分の1を占めて最も多い業種となっているのは大手企業と同様ですが、広告・マーケティングや不動産がそれに続いているのが特徴的です。特に広告・マーケティングは、中堅・中小企業のなかで従業員満足度が経営上重要なファクターであることを窺わせるものがあります。

 ここでは上位3業種で過半を占めており、大手企業よりも業種特性が強く反映されているのではないかと思われます。

 

【注1

大企業については、グラスドア社の以下のサイトに結果が公表されています。

https://www.glassdoor.com/Award/Best-Places-to-Work-LST_KQ0,19.htm

 

【注2

たとえば、以下の記事に紹介されています。

https://jp.techcrunch.com/2018/12/06/2018-12-04-these-are-the-15-best-u-s-tech-companies-to-work-for-in-2019-according-to-glassdoor/

 

【注3

中堅・中小企業については、グラスドア社の以下のサイトをご覧ください。

https://www.glassdoor.com/Award/Best-Small-and-Medium-Companies-to-Work-For-LST_KQ0,43.htm

 

【注4

もうひとつは、冷戦期に軍事技術開発のために設立されたローレンス・リバモア研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)です。この研究機関のHPの表紙にグラスドアのランキングに入ったことが、次のように示されています。

 

作成・編集:人事戦略チーム(20181211日)