21 Lessons ~21世紀の人類のための21の思考~(1)
(1)今ここで考えるテーマ
今回ご紹介するのは、イスラエル人の歴史学者ユバル・ノア・ハラリが、これまでの著作物(注1)でテーマとしてきた歴史(過去)とテクノロジー(未来)についての考察を通じて、では「今、ここ」(現在)の課題にはどのように取り組んでいったらよいのか、そうした問題意識にフォーカスして書かれたものです。
21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考
(ユバル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳、河出書房新社より2019年11月発行)
著者は、「はじめに」において基本的な問題意識について、次のように述べています。
本書ではまず、目下の政治とテクノロジーにまつわる苦境を概観する。(中略)ファシズムと共産主義が崩壊したのち、今度は自由主義が窮地に陥っている。では、私たちはどこに向かっているのか?
これはとりわけ差し迫った疑問と言える。なぜなら、情報テクノロジー(IT)とバイオテクノロジーにおける双子の革命が、私たちの種がこれまで出合ったうちで最大の難題を突きつけてきたまさにそのときに、自由主義は信用を失いつつあるからだ。(「21 Lessons」11ページより)
こうした問題意識の下、本書ではまずテクノロジー、特にITとバイオテクノロジーが現にもたらしている問題やその影響を身近なことから論じ、政治・宗教・テロと戦争といった諸問題を考察し、情報や教育といった最終的には一人ひとりの個人にとっての問題やその影響を見通していきます。
以下に本書で採り上げられている21のテーマを挙げておきます。
・幻滅
・雇用
・自由
・平等
・コミュニティ
・文明
・ナショナリズム
・宗教
・移民
・テロ
・戦争
・謙虚さ
・神
・世俗主義
・無知
・正義
・ポスト・トゥルース
・SF
・教育
・意味
・瞑想
ここではこれらのすべての事項に言及することはできませんが、マネジメントやキャリアについて考える上で参考にしたいところを中心に、本書の考察をご紹介していきたいと思います。
【注1】
「サピエンス全史」及び「ホモ・デウス」は日本語版も出版されているので、ご存じの方も多いと思います。
最初の拙著「サピエンス全史――文明の構造と人類の幸福」では、人間の過去を見渡し、ヒトという取るに足らない霊長類が地球という惑星の支配者となる過程を詳しく考察した。
第二作の「ホモ・サピエンス――テクノロジーとサピエンスの未来」では、生命の遠い将来を探求し、人間がいずれ神となる可能性や、知能と意識が最終的にどのような運命をたどるかについて、入念に考察した。(「21 Lesson」7ページより)
文章作成:QMS代表 井田修(2020年3月2日更新)