リモートワークにおけるリーダーシップ(1)
コロナ禍を契機にリモートワークを本格的に導入する組織が多くなるにつれて、改めてリーダーシップを巡るさまざまな課題が明らかになってきました。
特にコロナ禍への対応が二転三転したり、方針は決まってもなかなか実行に移すことが容易でなかったりする状況下では、誰もリーダーシップを執らない(執れない)まま時間が過ぎて、身動きが取れない企業もあります。その一方で、状況の変化に機敏に対応して、事業を作り変えたり、収益を増大させたりする企業も少なくありません。
この違いはどこから生じるものでしょうか。
一言で言えば、変化に対応するリーダーシップの違いから生じるものでしょう。つまり、変化の方向がわずかにでも見えるものがあれば、その方向に試行錯誤の第一歩を踏み出すリーダーが機能している組織と、そうではない組織との違いが明確な差となって現われているのです。
ここで注意したいのは、リーダーは必ずしも組織の長というわけではないということです。むしろ、現場にいて仕事の組み立てを熟知している人が、状況の変化に応じて新たな仕組みを生み出していることが、リーダーシップを発揮していることなのです。
組織上の長は、檄を飛ばしたり細かく指示を・命令を下して自ら先頭に立って活動するというよりも、現場が動きやすいように必要な経営資源を調達したり周囲の雑音から現場を守ったりすることに注力していることが多いように思われます。
実際、コロナ禍に置かれている組織に求められるリーダーシップというと、現場の創意工夫・試行錯誤から新たな枠組みや仕組みを作り出していること、それらを迅速に集中的に実施するために必要な支援を与えたり障害を取り除いたりすること、何かと不自由な状況や例外処理に迫られる事態が多い中で落ち着いて指示や提案を行っていること、時には朝令暮改を厭わず違っていたりダメだと判断すれば即座に方針を変えること、そして、これまで行ったことがない仕事や処理方法に対して逃げずにとりあえずやってみる余裕があること、といった事象を見て取ることができます。
この連載では、コロナ禍のような想定外の状況におけるリーダーシップのありかたを、改めて考えてみたいと思います。
なお、当サイトでは、これまでにもリーダーシップについていくつかの事例などをコラムや書籍紹介の形で採り上げてきました(注1)。リモートワーク固有の課題を扱っているわけではありませんが、それぞれの事例を通じてリーダーシップを巡る議論の一端を理解できます。
作成・編集:経営支援チーム(2021年4月14日更新)
【注1】
当コラムで過去に採り上げたリーダーシップに関するものは、次のようなものがあります。
「2001 キューブリック クラーク」に見るリーダーシップとイノベーション
「1918年の最強ドイツ軍はなぜ敗れたのか」に見るリーダーシップと戦略
また、“書籍のご紹介”で採り上げたことがある「ビジネススクールで教えているファミリービジネス経営論」では、ファミリービジネスにおけるリーダーシップのありかたとして、スチュワードシップが紹介されています。