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人事に主義はいらない(1)

人事に主義はいらない(1

 

近年、成果主義の限界とか終焉といった表現を目にすることが多いように感じられます。その一方で、OKRとかKPIというように、いかにも新しい(ように思われそうな)業績評価手法を導入しないと生き残れないといった声もあります。

確かに、事業環境の変化が激しいことは論も俟たず、環境変化に対応していくだけでも容易なことではありません。それは人事についても同様で、従来のやりかたを改め、新たなアプローチで採用・教育・配置・評価・処遇・退職などに臨まなければなりません。とはいえ、先日物議を醸した45歳定年制など、言葉足らずで勇み足気味な施策ばかりが注目されるようでは心許ありません。安心して働くことができるという心理的安全性の前提条件が満たされないのでは、働く人々が仕事に集中できるとは思えません。

そのうえ、コロナウイルス感染症は一向に止む気配も見せず、オフィスを全面的に再開してコロナ以前のような出勤風景に戻る日が訪れる目途は依然として立ちません。ビジネスも、一部の業種ではそれなりに業績の回復が実現したり赤字からの脱却が見通せたりしている企業もありますが、明るい展望をもてるのはごく一部に限られているようです。

コロナ禍以前には働き方改革がお題目となり、人事のありかた、特に仕事の割り当てや評価について、大きく見直す必要に迫られていました。コロナ禍を契機に、オフィスに縛られない働き方や在宅勤務の必要性から、さまざまなリモートワークのスタイルが注目を集め、実践されています。ここでも、人材の採用・配置や教育訓練、仕事の割り当てや進め方、業績評価、処遇(特に金銭的な手当や福利厚生プログラムの公平性)といった面で、以前にもまして不満や問題点が数多く指摘されています。

こうした現状に対して、これが解決策というような正しい解答はあるのでしょうか。もしあるとすれば、それは何でしょうか。

こうした疑問は誰しも抱くところです。そして、解決策や正解はわからなくとも、現状が間違いだらけであり、具体策は試行錯誤で取り組むとしても、せめて解決への方向は何とか見出したいと思うでしょう。但し、その方向性は、従来の成果主義であったり、ましてやその前の年功序列や能力主義であるはずがない、そう考えるのは自然なことです。

 

 今回のコラムでは、こうした疑問を出発点に、いま再構成すべき人事のありかたについて、従来の反省を踏まえて、ひとつの考え方をご紹介していきたいと思います。

 

(2)に続く

 

作成・編集:人事戦略チーム(2021919日)