再検討を要するリスクマネジメント(1)
今日3月11日は東日本大震災が発生した日です。11年前のあの日の午後、どこで何をしていたのか思い出してみると、地震や津波に対する備えがいかに疎かであったか、そしてそれは今どこまで改善されたのか、振り返ってみる必要があります。
更に今年は、ロシアによるウクライナ侵攻が起こり、21世紀になって改めて地政学的リスクが極めて大きな影響力を及ぼすことが実証されつつあります。ベルリンの壁が崩壊した頃より30年以上にわたって、イスラム系のテロや中東及びアジア・アフリカの一部の地域の問題と思われてきた地政学的リスクに対して、再びヨーロッパ諸国は対応を迫られています。
そのリスクは、もちろん欧米やロシアだけの問題ではなく、日本、そして世界全体の問題でもあります。ここで問題というのは、政治的な意味で語られるものでもありますが、同時に経済社会体制や個々の企業経営における問題でもあります。
ちなみに、21世紀において発生した重大なリスク事象について年表風にまとめてみると次のようになります。既に忘れかけているものもありそうで、時間の経過とともにリスクへの感応度が低下していることを実感させられます。
<海外で発生した重大な社会的リスク事象>
2001年 アメリカ同時多発テロ事件
2005年 ロンドン同時爆破テロ事件
2008年 リーマンショック
2011年 ジャスミン革命(アラブの春)
2015年 パリ同時多発テロ事件
2017年 アメリカ・トランプ大統領就任
2020年 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック
2022年 ロシアのウクライナ進攻
<海外で発生した重大な環境リスク事象>
2003年 ヨーロッパ熱波
2004年 スマトラ島沖地震
2005年 ハリケーンカトリーナ(アメリカ南部ニューオーリンズなど)
2008年 四川大地震
2010年 ハイチ大地震
2011年 東アフリカ大旱魃
2015年 COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)
2019年 ヨーロッパ熱波
2020年 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック
<日本国内では発生した重大なリスク事象>
2003年 SARS(重症急性呼吸器症候群)発生
2005年 個人情報保護法
2007年 郵政民営化スタート
2009年 裁判員裁判スタート、民主党政権と事業仕分け
2011年 東日本大震災
2012年 自公連立政権
2015年 鬼怒川決壊
2020年 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック
ここに例示したリスク事象がすべてではありません。
特に地球温暖化に代表される環境問題、ジェンダーや人権に関する問題、過労死・働き方改革・外国人労働者などの労働に関する問題、社会的法的な規制への対応、AIやバイオサイエンスなどの技術革新がもたらす問題、ITや社会的インフラのトラブルなど、リスクとして認識すべき問題事象は次々と現れます。
それらに対して事前に網羅的な対応を用意しておくことは、すべてのリスクを認識することができない以上、原理的に不可能ですが、だからといって事前に何の対応策も考えておかないというのではマネジメントを放棄したことになるでしょう。
ただし、リスクを洗い出し対応策を用意するということは、無視できないコストを負担しなければ実行できません。この負担すべきコストをかけたくないばかりに、せっかく予防的な措置を実現できるチャンスがあっても、みすみす逃してしまう実例は身近なところにもあります。自動車事故や火災など、自分は大丈夫と思って必要なコストをかけないと、確率は低くても死に直結するケースは発生するのです。
国家・企業・個人を問わず、何らかの未知のリスクが具体的な事象として顕在化したならば、まず当面の対応をして被害や損害などのマイナスの影響を抑えつつ、出現したリスクへの適応策をできるだけ早く打ち出し、試行錯誤はあっても数年のうちに仕事のやりかたをアップデイトして、次の展開につなげていくことが求められます。ときにはリスクへの対応が新たなビジネスチャンスや収益機会の開発・獲得につながります。
このコラムでは、リスクをいくつかの種類に分けてみて、それぞれの対応策のありかたを検討していきたいと思います。そして、特にベンチャーや中小企業にとってのリスクマネジメントのありかたについて考察を試みるつもりです。
作成・編集:経営支援チーム(2022年3月11日)