キャリアチェンジのタイミング(1)
4月も後半となりゴールデンウィークの予定が決まるこの頃、今年入社したばかりの新入社員の皆さんも新人研修や配属先にも慣れてきた時期でしょう。既に退職届を出して入社したばかりの会社を辞めた人もいるかもしれませんが、そうでない人にとっても入社1年目というのは、期待外れなことが多少なりとも起きていることでしょう。
入社して3年以内に退職する社員が3割というのが常識かもしれませんが、会社も社員もそれなりに時間とコストと労力をかけて採用活動を行った結果が、入社して1年も経たずに辞める人が出るというのでは、何のための採用活動だったのかと無力感に捉われるのが当然です。もちろん、退職した社員にとっても、採用活動時の情報と仕事や組織の実態が著しく乖離しているからこそ、すぐに見切りをつけたのでしょうから、やむを得ない判断ではありますが。
個人のキャリアという観点で言えば、特に新規学卒者にとって入社1年目は学生として外から見ていた会社と実際に入社して体感する仕事の実情や組織文化とのギャップにうまく適応できるかどうかが問われます。こうしたギャップへの適応は中途採用者でも同様です。ただ、中途採用者は、前職(以前勤めていた会社)での経験やそれとの比較ができるので、個人差は大きいかもしれませんが、新規学卒者よりも新たな仕事や職場での折り合いをまだしもつけやすいはずです。
近年では、育児や介護、長期の就職活動やボランティア活動などでキャリアの途中に何らかの空白期間(=キャリアブレイク)があった人でも、労働市場において価値のある人材として評価すべきという見方(注1)も確実に広がってきています。
個人にとっては自らのキャリアをデザインする上で旧来はマイナスと思われてきた事由であっても、その経緯やキャリアブレイク中の経験から得た学びから次のキャリアを開発するチャンスが生まれてきます。企業にとっては、そうしたキャリアを活かせる個人を採用し、その能力を開発し活用できるように仕事のありようを再設計したり組織文化を再定義したりすることが求められています。
キャリアチェンジのタイミングこそ表面的には大きく変わっていないとしても、その意味や目的を的確に捉えて対応することが、キャリアチェンジの主役である個人にも、キャリアの場を設ける組織体にも、それぞれ強く要請されるようになってきました。
【注1】
キャリアブレイク(キャリアの中断)については、「ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー『キャリアの中断が価値ある経験として認められつつある~再就職希望者という「隠れた」人材プールを活用する』(2022年4月21日、dhbr.net)を参照してください。
作成・編集:人事戦略チーム(2022年4月22日)