オリビア・ニュートン=ジョンの訃報に接して

オリビア・ニュートン=ジョンの訃報に接して

 

本日、歌手で俳優のオリビア・ニュートン=ジョン氏が73歳で亡くなったことが報じられました(注1)。

もとは洋楽ポップス、というよりもカントリー歌手と思っていたオリビアです。最初に彼女の歌声を訊いたのは、“Have You Never Been Mellow”だったかもしれませんが、 前後して“Jolene”や“Take Me Home, Country Roads”といった曲に耳が馴染んでいった気がします。特に“Take Me Home, Country Roads”は、オリジナルのジョン・デンバーよりもオリビアのカバーのほうが強く印象に残っています。

イギリスで生まれオーストラリアで育ったことを後に知って、70年代のアメリカで歌手として売れるには、まだまだカントリーの影響力が大きかったことに驚いた記憶があります。もちろん、カーペンターズとほぼ同時期に“Have You Never Been Mellow”をヒットさせたオリビアは、カントリーの歌手から妖精のイメージに転換し、更に80年代に入ると“Physical”で大人のアーティストへと変貌を遂げてみせることになります。

その間に彼女のフィルモグラフィーのなかで極めて重要な作品が生まれます。次の3作品(注2)で、俳優としてのオリビアのキャリアが作られていきます。

 

「グリース」(Grease1978)

「ザナドゥ」(“Xanadu1980年)

「セカンド・チャンス」(Two of a Kind1983)

 

まず、オーストラリアで育ちアメリカに移ってきた転校生のラブストーリーを1950年代の高校を舞台とするミュージカルに仕立てた「グリース」です。設定は彼女に合わせたように思えるのですが、20代後半で高校生役というのは、相手役のジョン・トラボルタともども、さすがに厳しいものがあります。公開当時、映画館のなかで失笑が漏れた記憶もあります。

しかし、音楽と映像(特に色彩)とコメディの要素が見事に嵌まって映画はヒットしました。ストレートな物語であった“Saturday Night Fever”でスターになったトラボルタがコミカルな役もできることを示すとともに、オリビアも育ちの良いお譲さんが無理につっぱる様子が笑えるとともに、二人とも歌も踊りもできることを示しています。

次の「ザナドゥ」ではミ、オリビアはューズの一人で売れない画家を導く役です。この作品は、当時人気を誇っていたELOの音楽にローラースケートでのダンスシーンが加わり、既に引退していた伝説的なミュージカルスターのジーン・ケリーが復活し出演するなど、見所が多くあります。

見ようによっては、オリビアは“Physical”のPVとこの作品で大人のアーティストに見せることには成功したのかもしれません。個人的には「グリース」以上にお気に入りのシーンもあるのですが、興行的にも批評的にも良い評価は得られなかったはずです。

そして、ジョン・トラボルタと再び共演した「セカンド・チャンス」です。神様が出てくるラブコメディというと、この当時は「天国から来たチャンピオン」(“Heaven Can Wait1978年)のように、後の作品に大きく影響したものもありましたが、この作品はヒットもせず不評でした。

その理由のひとつには、オリビア・ニュートン=ジョンとトラボルタの共演でありながら、(多分観客の多くが期待したであろう)歌も踊りもないことが指摘できます。実際、「セカンド・チャンス」の主題歌“Twist of Fate”はヒットもしましたから、観客が見たいのもミュージカルシーンではなかったかと思われます。

銀行の金を横領していたOLで強盗に入ってきた男(ジョン・トラボルタ)に恋するようになるという設定も、オリビアのイメージに合わなかったのでしょう。今になって考えると、ラブコメディであるのなら、地味なOLから輝くようなオリビアに変身して、男が惚れ直すといったシーンくらいは必要だったのかもしれません。

改めてオリビア・ニュートン=ジョンが主演した作品を思い返してみると、「グリース」のイメージがいかに決定的であったか理解できます。21世紀になってから「グリース」の復活イベント(注3)が開かれ、そこに二人ともに参加して息の合ったところを見せています。まさにライデル・ハイ(ライデル高校)のリユニオン(同窓会)です。一足早く天国で「グリース」を歌い踊っていることでしょう。

 

【注1

たとえば、以下のように報じられています。

CNN.co.jp : 豪歌手で俳優のオリビア・ニュートンジョンさん死去、73歳 「グリース」に主演

オリビア・ニュートン・ジョンさん死去 73歳 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News

 

【注2

 

各作品のご紹介まで。

 

【注3

 

「グリース」の復活イベントの模様がアップされています。

 

  作成・編集:QMS代表 井田修(202289日)