宮沢章夫氏の訃報に接して
昨日、作家で劇作家・舞台演出家の宮沢章夫氏が鬱血性心不全のため今月12日に亡くなっていたことが公表されました(注1)。氏の作品の中で筆者が観た記憶があるものを挙げてみると、次のようになります。なお、()の中は上演年、上演したパフォーマンスユニット名または劇団名です。
「砂漠監視隊」(1989年、ラジカル・ガジベリビンバ・システム)
「遊園地再生」(1990年、遊園地再生事業団、以下の作品全て)
「ヒネミ」(1992年)
「ヒネミの商人」(1993年)
「砂の声と遠い国」(1994年)
「箱庭とピクニック計画」(1994年)
「ヒネミ(再演)」(1995年)
「知覚の庭」(1995年)
「砂の楽園」(1996年)
「密の流れる地 千年のヒネミ」(1996年)
「あの小説の中で集まろう」(1997年)
ラフォーレ原宿のスペースで観た「砂漠監視隊」は、後に「砂の声と遠い国」や「砂の楽園」としてシチュエーションを引き継ぎながら、乾いた笑いを生み出し続けていました。その独特の持ち味に一度で引き込まれました。
もう一つの流れを作り出し、岸田國士戯曲賞を受賞した「ヒネミ」にも嵌まりました。静かな場面が続く中で、地図作りと記憶探しという終わりがあるようでないような作業を続ける芝居は、時折起こるナンセンスなやりとりを笑っていいのか迷う楽しさがありました。
この頃、笑える演劇というと、翻訳ものでは、ニール・サイモンの大人のラブ・コメディ、ジョルジョ・フェドーなどの古典的なシチュエーション・コメディ、新劇系の流れではチェーホフの作品が中心でした。日本の作品では、三谷幸喜氏のようなストーリーが明確なコメディ(特にシチュエーションコメディ)や笑いも涙もありというタッチの人情劇、またはドタバタとした動きや一発ギャグで笑いを取るコントといったものが多かったように思います。もちろん、岩松了氏(東京乾電池、竹中直人の会)や鈴木聡氏(ラッパ屋)のような、現代の新劇を志向した現実感の強いコメディもありました。
その中で、氏やケラリーノ・サンドロヴィッチ氏のように、スケッチを次々と展開しつつ、クスッと笑わせられる作品を生み出すユニットが活躍していたのが、90年代だったように思われます。時間はずいぶんと経ってしまいましたが、今でも観てみたい舞台に他なりません。
【注1】
たとえば、以下のように報じられています。
宮沢章夫さん死去 65歳 劇作家や演出家 小説家など幅広く活躍 | NHK | 訃報
作家・宮沢章夫氏が急死 65歳 竹中直人らと「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」結成/サブカル系/芸能/デイリースポーツ online (daily.co.jp)
作成・編集:QMS代表 井田修(2022年9月22日)