働くのに最高の職場2023<2022年調査>(2)
次に、評価の高いベスト10の企業について、直近5年の変遷を見てみましょう。はじめに大企業についてです。
大手企業 |
|||||
調査対象年 |
2022年 |
2021年 |
2020年 |
2019年 |
2018年 |
1位 |
ゲインサイト |
エヌヴィディア |
ベイン |
ハブスポット |
ベイン |
2位 |
ボックス |
ハブスポット |
エヌヴィディア |
ベイン |
ズーム |
3位 |
ベイン |
ベイン |
In-N-Out バーガー |
ドキュサイン |
In-N-Out バーガー |
4位 |
マッキンゼー |
eXpリアルティ |
ハブスポット |
In-N-Out バーガー |
プロコア・テクノロジーズ |
5位 |
エヌヴィディア |
ボックス |
マッキンゼー |
サモンズ金融グループ |
BCG |
6位 |
マスワークス |
BCG |
グーグル |
ローレンスリバモア研究所 |
リンクトイン |
7位 |
BCG |
グーグル |
デルタ航空 |
インテュイティブ |
メタ(フェイスブック) |
8位 |
グーグル |
退役者住宅ローン |
ルルレモン |
UKG |
グーグル |
9位 |
サービスナウ |
ルルレモン |
マイクロソフト |
VIPキッド |
ルルレモン |
10位 |
In-N-Out バーガー |
セールスフォース |
HEB |
サウスウエスト航空 |
サウスウエスト航空 |
大企業の上位10社のスコアは全て4.6以上あり、前年よりも0.1上がっています。それだけ人材競争が激しくなり、より高いスコアを獲得できるような企業でなければビジネス面で勝ち抜いていくことができないと広く考えられているのでしょう。
ベイン、マッキンゼー、BCGといったコンサルティング会社や、ボックス、エヌヴィディア、グーグルといったITサービスやコンピューター関連の常連企業が上位を占めている中で、ルルレモンやハブスポットなどは姿を消しました。
新たにランクインした企業は、ゲインサイト、マスワークス、サービスナウの3社です。
初登場で1位にいきなりなったゲインサイトは、カスタマーサクセスのプラットフォーマーです。CEOを始め、インド系と思われる経営幹部が多く見られます。この会社には次の5つのバリューがあります。黄金律“そう扱ってほしいように人々を遇する”、全員の成功(全員とは顧客、チームメイト、家族、コミュニティ)、子供のように喜ぶこと(インナーチャイルドとともに働く)、ショシン(ローマ字で表記、初心忘るべからず)、渇望のままに(偉大さを心から求めよ)、以上5つのバリューで、これらのバリューとダイバーシティ&インクルージョンが同社の評価を高めている要因なのかもしれません。
6位のマスワークスは科学技術計算の分野でのリーディングカンパニーを標榜しています。共同創業者のひとりはチーフ数学者兼会長で、もうひとりの共同創業者はCEOです。まさに創業者が会社を体現しているのでしょう。そのせいかSTEM教育も重視し、自社の製品やサービスを通じてSTEM教育へのサポートも行っています。
9位のサービスナウはプラットフォーマーのプラットフォームを目指すビジネスモデルです。日本風に言えば、顧客や従業員にDX経験をもたらすプラットフォームをすぐに用意して、コーディングやプログラミングをできるだけ意識せずに活用できる仕事と組織のプラットフォーマー、というところでしょうか。今の仕事をDX化するのではなく、サービスナウのプラットフォームに載って仕事をすると、結果としてすぐにDX化するイメージです。
なお、10位のIn-N-Outバーガーは毎年安定したスコアをつけており、コロナ禍をものともせず、全米で約300の店舗(ドライブスルーを含む)を運営するハンバーガーチェーンです。現在の経営者も創業者の孫で株式非公開の会社です。この会社の特長は、急成長を志向せず、海外での事業展開も行わずに、70年以上にわたって着実にハンバーガーを提供し続けてきたことでしょう。また、人身売買や児童虐待の被害者に対する支援活動をサポートする寄付を積極的に行っている点も見逃せません。
次に中堅・中小企業のベスト10について5年間の変遷です。
中堅・中小企業 |
|
||||
調査対象年 |
2022年 |
2021年 |
2020年 |
2019年 |
2018年 |
1位 |
グッドウィン・リクルーティング |
クライアント・ブースト |
ライフ.教会 |
ライフ.教会 |
ヒープ |
2位 |
テレマインド |
グローバー・ゲーミング |
クルー・カーウォッシュ |
クロスカントリー・コンサルティング |
ホライゾン・イノベーション |
3位 |
JJテイラー |
6センス |
アイク |
15ファイブ |
シルバーライン |
4位 |
パリヴェダ |
ライフオミック |
パリヴェダ |
IGNW |
マーケティング360 |
5位 |
アイアンクラッド |
グリン |
マル―フ・カンパニーズ |
バンブーHR |
デジタル・プロスペクターズ |
6位 |
クォリファイド |
パカソ |
ハーネス |
ハイスポット |
ゲットUワイアード |
7位 |
キャプティベイトIQ |
セールス・エンパワーメント・グループ |
MLM ホーム・インプルーブメント |
ノウビー4 |
ウィーブ |
8位 |
シェルマン |
クラヴィヨ |
レンディオ |
セールスロフト |
マル―フ・カンパニーズ |
9位 |
エバーロー |
エトス・グループ |
ジョボット |
シーク・キャピタル |
ハイスポット |
10位 |
バーバー・ニコルズ |
サウスカロライナ連邦信用組合 |
ロウアー |
ソートスポット |
ピーボディ・プロパティーズ |
中堅・中小企業のベスト10については、昨年の調査結果について以下のようにコメントしました。
こちらは、順位の変動が大きい上に、スコアも上下に激しく動くことが珍しくありません。ベスト10に入るところは4.5以上(ベスト3では4.9となることも)が常態化していますが、2年連続して高いスコアを取ってランクインし続ける企業は滅多に現われません。
今回は、上位10社のリストに載っている企業は全て4.6以上のスコアである点は大手企業と同様です。ということは、スコアが多少改善した程度では順位が上がることは望めず、ここにリストアップされた企業は相当なスコアアップがあったはずです。
もちろん、大企業に比べて中堅・中小企業の方が、従業員1人がもつウエイトが大きいため、より少ない従業員の動向がスコアを左右しますから、人事施策がうまく嵌まれば、一気にスコアが良くなることはあるでしょう。
まず賃金を思い切って引き上げ、退職年金給付などのベネフィット(福利厚生)を手厚くするといったことを行ったはずです。また、リモートワークのような通勤しない働き方や休暇取得(=家族といっしょに過ごす時間を増大させるワークスタイル)を積極的に推奨したり、仕事の意味付けを見直して金儲けよりも優先すべき価値の追求(地球環境問題や貧困などの社会的な課題や企業倫理上の問題)に資する行動を促したりすることも求められたでしょう。
そうした施策を迅速に実施するには、やはり経営者のリーダーシップが欠かせません。中堅・中小企業が一気に人事施策を転換し、従業員を引き付けるには、経営トップのリーダーシップと本気で取り組むエネルギーの発露が欠かせません。ただ、それらがなかなか継続しない点に、中堅・中小企業のなかで安定した順位を維持する企業が滅多に現われない原因があるのかもしれません。
作成・編集:人事戦略チーム(2023年1月27日)