ミンツバーグの組織論(1)
(1)組織の定義
今回ご紹介するのはカナダの経営学者ヘンリー・ミンツバーグが半世紀以上にわたって研究してきた「組織」についての著作です。
ミンツバーグの組織論
(ヘンリー・ミンツバーグ著、池村千秋訳、ダイヤモンド社より2024年6月発行)
紹介者が就職した1980年代半ばでは、組織についてのまとまった書籍が案外見当たらず、本書の元となった1979年に刊行されたものなどを参考に学んだ記憶があります。
本書は1979年に刊行されたものの簡約版(1983年刊行)を改訂したものです。改訂版とは言え、近年の組織のありかたや組織デザイン論の動向などにも論及しています。書名からは、学術的な専門書を思われるかもしれませんが、語り口は平易で一般の読者向けに書かれています。本書の中で最も堅苦しい表現と思われる箇所でも、次のような表現に留まります。
組織とは、共通の使命(ミッション)を追求するために組み立てられた集団的行動と定義できる。これを7歳児(ともっと年長の人たち)のために少し噛み砕いて表現すると、大勢の人たちが正式な取り決めの下、なにかを達成しようとするのが組織だと言える。そして、組織の構造とは、組織のメンバーが使命の達成に向けた行動を一緒に取るために設計された、人と人の関係のパターンと定義できる。(本書15ページより)
さて、著者は組織について論じるに当たって、まずはプレーヤーとその相互関係を4種類の基本的な類型から始めます。そして、組織を意思決定と戦略立案とマネジメントの場とするならば、アート・クラフト・サイエンスの3つの要素から組織が形成されていると説きます。更に組織デザインのメカニズムと要素について考察していきます。
次に、組織の基本的な4形態を説明します。パーソナル型、プログラム型、プロフェッショナル型、プロジェクト型、それぞれの基本構造・環境と種類・長所と短所などを詳説します。この4つの形態をきちんと頭に入れておくと、自社や自部門がどのような特徴があるのか、身近に評価するのに役立つでしょう。
続いて、基本的な4形態に作用する7つの力を提示し、基本的な4形態から発展した3形態(事業部型、コミュニティシップ型、政治アリーナ型)について説明します。
生まれた組織は、ひとつの方向に成長・拡大していくとは限りません。基本的な形態を同時にいくつも纏うハイブリッド型の組織になることもあれば、時には、暴走したり、縮小したり、死を迎えたりすることもあります。そうした組織のライフサイクルと形態の変遷についても論じます。
最後に、組織と外界との境界について考察します。特に現代では組織から外へ、外から組織へと流動的な形態も多く見られるようになっています。また、行動としての組織デザインを通じて、マネジメントとして実際に組織をデザインしていくことにも言及しています。
文章作成:QMS代表 井田修(2024年9月11日更新)