テリー・ガー氏の訃報に接して
一昨日、女優のテリー・ガー氏が亡くなったことが報じられました(注1)。79歳でした。長年にわたって闘病中だった多発性硬化症による合併症で亡くなったとのことです。
実際に鑑賞したことがある作品として次のもの(注2)があります。
「未知との遭遇」(“Close Encounters of the Third Kind”USA、1977年)
「ワン・フロム・ザ・ハート」(“One form the Heart”USA、1982年)
「トッツィー」(“Tootsie”USA、1982年)
「ミスター・マム」(“Mr. Mom”USA、1983年)
いずれも1980年前後の作品ですが、ちょうどこの頃に小学生くらいの子供を持つ母親を演じるとなると、テリー・ガー氏の名前しか浮かんできません。
「未知との遭遇」では、未知の飛行物体に取りつかれてしまう夫(リチャード・ドレイファス)の言動や超自然的な現象に子供を抱えて狼狽する妻に扮しています。子供や夫の身を案じる妻のイメージを体現していると言っても過言ではありません。
「ミスター・マム」では、リストラされた夫(マイケル・キートン)に替わって専業主婦からエグゼクティブとして働き始める妻を演じています。この作品は、家事を担当することになった夫が家事や育児に悪戦苦闘する姿や外で活躍し始める妻との関係をコミカルに描くものでした。
日本でも昭和の女優の中には母親と言えば○○さんという人がいそうです。個人的には、三宅邦子、八千草薫、池内淳子、山岡久乃、京塚昌子といった名前が想起されます。ハリウッド女優というと、あまり母親のイメージを抱かせる人はいませんが、氏は数少ない母親役が似合う俳優でした。
同時代で母親役を演じていた女優として「クレイマー、クレイマー」のメリル・ストリープと比べてみると、後々、「プラダを着た悪魔」で上級エグゼクティブを演じるに至るイメージを重ねることは無理な話でしょう。仕事に生きるというよりも、家事や育児に生きているキャラクターが持ち味の女優でした。
もちろん、母親役だけを演じていたわけではありません。「ワン・フロム・ザ・ハート」と「トッツィー」では、主人公の恋人を演じています。どちらも恋人との関係はトラブルが多く、つい怒鳴ったり物を投げつけたりしがちな役柄です。それを明るく演じるところに、コメディエンヌとしての持ち味が活かされていました。
キャリア全体では、映画にTVドラマにPV(注3)に数多く出演しています。主役でスターという俳優ではありませんが、いなければ作品が成立しなくなるキャラクターに扮して活躍していたことは間違いありません。
【注1】
たとえば、以下のように報じられています。
米俳優テリー・ガーさん死去、「トッツィー」でオスカー候補 | ロイター
米俳優テリー・ガーさん死去 『トッツィー』でアカデミー賞候補 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
【注2】
以下に予告編などで作品を紹介します。
【注3】
代表的なのはレイ・パーカー・ジュニアの“ゴースト・バスターズ”のPVです。最後のほうに顔を出しています。
作成・編集:QMS代表 井田修(2024年11月1日)