結果を出す方程式(2)
仕事で結果を出す方程式の第一の変数である「マインドセット」とは、本人に関する基本的な条件です。肉体的にも精神的にも体調に問題はないとしても、毎日々々、仕事に前向きに取り組んで結果を出すことは容易なことではありません。やる気や意欲やモチベーションなどは、ちょっとしたことで短期的に変動するでしょう。
もちろん、短期的に変動するということは、仮に望ましくない情況にあったとしても、本来はリセットしやすいものです。周囲のちょっとした声掛けやコーヒーブレイクでもあれば、気分転換ができる人も多いでしょう。
短期的に変動しやすいものであれば、どうすればマインドのリセットが可能か、リセットの条件付けを会得することが大事です。自分なりのリセットの方法や手順を知ること、また仕事に取り組むまでのルーティーンを確立しておくことが、マインドセットという変数をプラスにするのに不可欠です。
コロナ禍以降、テレワークが普及しオフィス以外で仕事をすることが一般化しています。特に在宅勤務では、プライベートと仕事との区分が物理的にも精神的にもつきにくい状況という人もいるでしょう。
そうした今だからこそ、仕事モードへの切り替え、仕事へとマインドをセットするスイッチを、自分なりに作ることが必要なのです。仕事に入る前にリモートで朝礼や業務連絡を定例化するとか、子供を保育園や幼稚園に送迎するとか、ペットなどと散歩したり遊んだりするとか、ランチや夕食を自分で用意することで気分転換を図るといった工夫も必要です。
在宅勤務に限りませんが、仕事中に音楽を流すとかガムを噛みながら仕事をするとかバランスボールに座って作業をするなど、自分なりに仕事モードのスイッチを入れるきっかけを自覚して実行したいものです。オフィスや客先ではいつでも実行可能ではないにしても、周囲の環境が許す限りは仕事モードに自然とスイッチが入るようにしなければ、その時その場での感情や情動の動きに「結果」が左右されてしまいます。
仕事で「結果」を安定的に出していくには、絶えず感情をコントロールすることが要請されます。自分に合った、自分なりのコントロール方法がないのであれば、感情をコントロールする手順や方法を決めておくことが必要です。これは儀式とかセラピーと呼んでもいいかもしれません。特に怒りに左右されないようにするには、アンガー・マネジメントという概念や手法を理解し実践することが求められます。
ところで、マインドセットは短期的に変動するものとは限りません。仕事に取り組む姿勢、学び続けるメンタリティ、後輩や年下の人たちからも意見やスキルを積極的に吸収しようとする動きなどのように、長期的にある程度変わらないものもあります。
仕事で結果を出すには、そもそも論として「結果」についての正しい理解が必要です。今自分に求められている出すべき結果とは何か、ということをどのように理解しているかどうかも、マインドセットの重要な部分を占めます。この点は、極めて重視すべきポイントです。
例えば、ロジスティクスの第一線で働いている人にとって、仕事とは「指定された日時に指定された場所へ物を運ぶ」ことなのか、「荷物を託した人の思いを本人に代わって届ける」ことなのか、仕事の捉え方で出すべき結果も変わってきます。
「結果」についての認識は、組織のミッションやバリューなどで規定されていることが多いでしょう。ポイントは、それらのミッションやバリューが仕事で求める「結果」に適切に反映されているかどうかです。先の例で言えば、単にものを運ぶのか、思いを届けるのかの違いです。その違いが、仕事のプロセスや仕事に取り組む姿勢に反映されるはずです。
このように、「結果」についての理解の違いが日々の仕事上の行動の違いにつながります。そして、「結果」についての理解の仕方が次第に刷り込まれて思考様式の違いになったり、「結果」につながる仕事上の行動が定式化したりして、改めて意識するまでもなく習慣化した行動に変化し定着していきます。
毎日仕事に着手する際に、まず一日の予定や作業計画を立てて進めるのか、手当たり次第に目の前にある物事から片付けようとするのか、といったことからして仕事の進め方に違いがあります。
また、同じ仕事をしていても、状況によって「結果」の意味するところは変わります。例えば、会社の倒産の危機にあるときに、今日の入金を間に合わせるために顧客に頼みに行こうとしてタクシーを使うのと、通常の営業活動に際して公共交通機関を使って行ける顧客を訪問するのに、敢えてタクシーや自社の営業車を使うのでは、「結果」の重みが違います。本日の入金という同じ結果を得られたとしても、コスト効率だけでなく環境負荷の違いにも気付いて、状況に応じたより適切な仕事のプロセスや手段を選択すべきでしょう。
こうした状況による違いは、本人は気がつかない場合もあります。その際は、周囲の人たちが注意することが必要ですが、周囲=環境という変数のひとつ=と本人との関係によっても本人の気づきが変わります。
つまり、マインドセットに関わる上で、上司・部下や同僚などの環境とのフィードバック・ループがどのように働いているかも、無視できない要素となります。ここではコミュニケーションのツール・内容・表現形態などがマインドセットに影響を与える要素となります。
長期的にある程度変わらないもの(仕事に取り組む姿勢、学び続けるメンタリティ、後輩や年下の人たちからも意見やスキルを積極的に吸収しようとする動きなど)であっても、日常的な環境とのフィードバックの蓄積が変化をもたらすことは十分にあり得ます。
このように、マインドセットという変数は、短期的にも長期的にも変動するものであり、その変数が単独で存在するのではなく、他の変数との間で相互に影響を及ぼす一定の関係があることを理解しておきたいものです。そして、マインドセットを整えるには、そのための方法や採るべき考え方などを知っているという意味で実践的な知識も必要です。
マインドセットの基盤となるものに本人の肉体的・物理的条件もありますが、健康面に問題があるのであれば、何を措いても健康を回復するのが最優先で取り組むべきテーマであることは、改めて言うまでもありません。ここでは、仕事をするのに問題ない程度に健康な状態であるとして、考えを進めてきたことを確認しておきます。
作成・編集:人事戦略チーム(2024年11月15日更新)