ジーン・ハックマンの訃報に接して
先週金曜日(28日)、アメリカの俳優のジーン・ハックマン氏が95歳で死去していたことが公表されました。亡くなった経緯や死因などは当局が調査中とのことですが、事件性は低いと報じられているようです(注1)。
氏は60年代より主に映画俳優として活動し、主役も敵役も脇役も幅広く演じてきました。筆者が実際に鑑賞したことがある映画作品としては、以下の16作品があります(注2)。
「俺たちに明日はない(原題:Bonnie and Clyde)」(1967年、USA)
「フレンチ・コネクション(原題:French Connection)」(1971年、USA)
「ポセイドン・アドベンチャー(原題:The Poseidon Adventure)」(1972年、USA)
「スケアクロウ(原題:Scarecrow)」(1973年、USA)
「ヤング・フランケンシュタイン(原題:Young Frankenstein)」(1974年、USA)
「フレンチ・コネクション2(原題:French Connection Ⅱ)」(1975年、USA)
「ナイト・ムーブズ(原題:Night Moves)」(1975年、USA)
「ドミノ・ターゲット(原題:The Domino Principle)」(1976年、USA)
「遠すぎた橋(原題:A Bridge Too Far)」(1976年、イギリス・USA合作)
「スーパーマン(原題:Superman)」(1978年、USA)
「スーパーマン2冒険篇(原題:Superman Ⅱ)」(1981年、USA)
「レッズ(原題:Reds)」(1981年、USA)
「地獄の7人(原題:Uncommon Valor)」(1983年、USA)
「スーパーマン4最強の敵(原題:Superman Ⅳ:Then Quest for Peace)」(1987年、USA)
「許されざる者(原題:Unforgiven)」(1992年、USA)
「クイック&デッド(原題:The Quick and the Dead)」(1995年、USA)
これらの作品で演じた役によって分けてみると次のようになります。
「フレンチ・コネクション」「フレンチ・コネクション2」の主人公である刑事ポパイ(ジミー・ドイル)は代表作でしょう。実際、「フレンチ・コネクション」はアカデミー賞で作品賞・主演男優賞・監督賞・脚色賞・編集賞を獲得しました。麻薬組織の頭目シャルニエを追って、ニューヨークで強引な捜査を行って同僚を誤って射殺するなど違法なことでもやって、猟犬のようにとにかく犯人を追い詰める姿は、シャルニエとの地下鉄での駆け引きや暴走する地下鉄を追うカーチェイスのシーンとともに、今日でも語り継がれているものです。
「ナイト・ムーブズ」では主役の私立探偵、「ドミノ・ターゲット」と「地獄の7人」ではベトナム戦争を経験した軍人でストーリーの中心となります。「地獄の7人」では行方不明の息子を探しにベトナムに赴く元大佐という父親に扮しています。「スケアクロウ」はアル・パチーノと2人が主役のロードムーヴィーです。「ポセイドン・アドベンチャー」はオールスターキャストのパニックもので、その中でストーリーをリードしていく役を演じています。
完全な敵役が、「スーパーマン」「スーパーマン2冒険篇」「スーパーマン4最強の敵」のレックス・ルーサーです。「許されざる者」と「クイック&デッド」の西部劇では敵役の保安官に扮しています。いずれも、悪役として観客の心に強く残ります。
パロディのコメディである「ヤング・フランケンシュタイン」では、重要な脇役の盲目の男(フランケンシュタインの怪物と友達になる盲目の少女のパロディ)に、「俺たちに明日はない」ではフェイ・ダナウェイが演じたボニー(原題のタイトルロールの一方)の兄というこれも重要な脇役を演じています。もう一方のタイトルロールであるクライドを演じたウォーレン・ベイティが後に製作・監督・主演・共同脚本を担当した大作「レッズ」にも出演しています。「遠すぎた橋」はオールスターキャストの第二次大戦ものです。
他の出演作品をみても、ロマンティック・コメディもあれば社会派ミステリーもあるなど幅広く演じています。そもそも俳優を志したのが30歳と遅かったせいか、通常のスター俳優が若い頃のイメージを保ったままキャリアを重ねていくことが多いのに対して、キャリア全体を通していわゆる“おじさん”を体現する点が最大の特徴ではないでしょうか。
人の目を気にせず、強引なやりくちでやりたいようにやる、現代で言えばコンプライアンスもハラスメントも無視するような役を演じて嵌まる役者でした。それでいて、同時に繊細なところや弱みもある人間の姿を見せることができるところに、アクターズスタジオ出身の演技者の力量の一端を垣間見ることができた人でもあります。
【注1】
たとえば、以下のように報じられています。
G・ハックマンさんと妻の遺体、台所と浴室で発見 玄関開いたまま | ロイター
米俳優ジーン・ハックマンさん夫妻の死に「不審点」 捜査当局:時事ドットコム
【注2】
「俺たちに明日はない」
「フレンチ・コネクション」
「ポセイドン・アドベンチャー」
「スケアクロウ」
「ヤング・フランケンシュタイン」
「フレンチ・コネクション2」
「ナイト・ムーブズ」
「ドミノ・ターゲット」
「遠すぎた橋」
「スーパーマン」
「スーパーマン2冒険篇」
「レッズ」
「地獄の7人」
「スーパーマン4最強の敵」
「許されざる者」
「クイック&デッド」
作成・編集:QMS代表 井田修(2025年3月4日)